アスリート必見!タンパク質の質とは?適切な摂取でパフォーマンスアップを目指そう
前回はタンパク質の「量」についてお伝えしました。
今回は、前回よりも少しレベルアップしタンパク質の「質」についてお伝えします。
食事の「質」を意識しよう
量は意識していても「質」まで理解して食事をしている選手は多くないでしょう。
これを知って、日々のアスリートの食事にお役立ていただければと思います。
選手自身の場合は自分で食事選択をする際の参考にしてみてください。
タンパク質の栄養素について
タンパク質は、魚・肉・卵・豆・豆製品等の主菜類や牛乳・ヨーグルト・チーズ等の乳・乳製品に多く含まれる栄養素です。
また、毎食欠かさず食べている「白ご飯」にもタンパク質は含まれています。
私たちが食事をし、その食材に含まれるタンパク質が体内で分解されると、最終的に「アミノ酸」となり吸収されていきます。
その後、筋肉や臓器など体タンパク質が合成されます。
タンパク質の「質」というのは、この全ての材料になるアミノ酸の「種類・量」によって変わってきます。
アミノ酸の種類
タンパク質と一口にいっても食品でいえば、肉・魚・卵・牛乳(動物性のもの)も、ご飯・パンなどの穀類や豆腐・納豆・厚揚げなど豆製品(植物性のもの)も存在します。
アミノ酸の種類は多く、全部で20種類にもなります。
私たちが普段口にしているタンパク質は、これら20種類のアミノ酸が様々な組み合わせでつながったものです。
20種類のアミノ酸は大きく2つに分類されます。
必須アミノ酸 9種類
(フェニルアラニン・トリプトファン・ヒスチジン・メチオニン・リジン・スレオニン・バリン・ロイシン・イソロイシン)
非必須アミノ酸 11種類
(アスパラギン・アスパラギン酸・アラニン・アルギニン・グルタミン・グルタミン酸・グリシン・プロリン・セリン)(システイン(シスチン)・チロシン)
必須アミノ酸は、体の中で合成できないアミノ酸です。つまり、食事(外部)から必ず摂取しなければ不足するアミノ酸と言えます。
非必須アミノ酸というのは、体内で合成できるアミノ酸です。(※ただし、非必須アミノ酸でも食事にあまりにも偏りがあると体内で不足する可能性があると言われています。)
食事(外部)から摂取しないと不足してしまう”必須アミノ酸”はとても重要ですね。
では、ここから質の良いタンパク質についてみていきましょう。
質の良いタンパク質とはアミノ酸スコアが質の良さを示す
質の良いタンパク質を含んだ食品というのは、必須アミノ酸の種類とバランスが十分な食品を指します。
質の良い食品かどうかを簡単に判断する基準として「アミノ酸スコア」があります。
アミノ酸スコアは、「必須アミノ酸がその食品にどのくらい含まれているか」そして、「必須アミノ酸の一定の基準に対してその食品はどのくらいの割合で含まれているのか」というものを表したものです。
少しわかりにくいので、桶に例えてお話していきます。
この桶は全部で9枚の板でできており、1枚1枚の板が組み合わさってできています。
この板1枚1枚を先ほどお話した必須アミノ酸9種類に見立てます。(準必須アミノ酸のシステインとチロシンを加えています)
そしてこの桶の赤線が基準であり必須アミノ酸の必要量を表したものです。(※基準というのは国際的な機関によって定められています。)
この2つの食品の桶を見ていただくと分かるように、「あじ」のように全ての必須アミノ酸が赤線(基準)を超えている場合を「アミノ酸スコア100」としています。アミノ酸スコアは100が限度です。100に近いほど質の良いタンパク質と言えるでしょう。
なので、質の良いタンパク質というのは必須アミノ酸9種類すべてが基準を超えていることと言えます。
そして、米のように基準を超えていない必須アミノ酸(米の場合はリジン)が1つでもあるとアミノ酸スコアが100から遠ざかっていきます。
タンパク質の栄養学的価値が下がっていることを意味します。
1つでも基準を超えていない必須アミノ酸があると、そのレベルに制御されタンパク質本来の働きが期待できません。つまり、質が悪いと言えるでしょう。桶の板が1枚でも短いと水はこぼれてしまいタンパク質の栄養価が少なくなります。
アスリートの食事はご飯に必ずおかずをつけよう
例えば、時間がなく朝食をご飯とふりかけだけで食事を終わらせていることはありませんか?
ご飯だけだと、必須アミノ酸である「リジン」が基準を満たせていません。ご飯は茶碗1杯(200g)当たり約5gのタンパク質を含みます。
朝ごはんのお供の「納豆」のタンパク質量は1パック(40g)で約6~7gです。1回あたりの食事量では各食品のタンパク質量に差はほぼありません。ですが米のアミノ酸スコアは65、納豆は100です。
アスリートはお米を沢山食べることが多いため、例えば茶碗2杯(400g)食べた場合タンパク質量だけで言うと10gと多くなりますが、アミノ酸スコアが低いためタンパク質としての栄養価が低くなっています。
ただ単に量をとれば良いわけではないことが分かりますね。
ここで納豆ご飯にすることでごはんのタンパク質は効果的に体内で利用することができます。
以下に主要な食品のアミノ酸スコアを示しました。
食品 | アミノ酸スコア |
鶏卵 | 100 |
牛肉・豚肉 | 100 |
豆類・納豆 | 100 |
あじ・いわし・さけ・まぐろ | 100 |
豆腐(木綿) | 82 |
精白米 | 65 |
パン | 44 |
うどん | 41 |
動物性食品のアミノ酸スコアは高く植物性食品のアミノ酸スコアが低い傾向があります。つまり比較的、動物性食品は質の良いタンパク質だと言えます。(※例外として納豆や大豆等豆類は植物性食品ですが質の良いタンパク質になります。)
これらのことから、肉・魚・卵・乳製品・大豆等が質の良いタンパク質だと言えそうです。
毎食十分に、これらの質のいいタンパク質含む食品はとれていますか?
アミノ酸スコアの注意点
ここで注意しておいてほしいことがあります。アミノ酸スコアが良い=タンパク質量が多いという訳ではないということです。
スコアはあくまで、質をみたものでありタンパク質量自体を評価したものではありません。
例えば、アミノ酸スコアが100の牛乳は100g当たり3.3gであり、アミノ酸スコアが44の食パンは100g当たり9.3gのタンパク質量を含みます。アミノ酸スコアで見れば、牛乳のほうが高いですがタンパク質自体の量でみると食パンのほうが多く含みます。
またアミノ酸スコアが低い、ご飯・パン・じゃがいも・うどんも他の食品(おかず類)で補えばアミノ酸スコアが100になるのです。タンパク質量も十分な量がとれて一石二鳥ですね。
大事なのは組み合わせ
ご飯とあじのアミノ酸スコアを示しました。
あじに少ない「ヒスチジン」や「トリプトファン」はご飯にしっかり含まれていますよね。ご飯に不足している「リジン」は逆にあじに多く含まれています。
足りていないからと言って、もし1種類の制限アミノ酸のみをサプリ等で補うと他のアミノ酸の必要量が増えてしまい逆効果ということもあります。
バランスよくアミノ酸を補い合うには、食事によって様々な食材を摂取していくことです。
アスリートの食事には質も量も必要
決して質の悪いタンパク質は摂る必要がないという訳ではありません。質だけを求め、必要なタンパク質量をアミノ酸スコアの100の動物性食品「肉」ばかりでとっていれば一緒に脂肪もついてきてしまい脂肪の過剰摂取になる可能性もあります。
そのような点からも、タンパク質は動物性も植物性もバランスよく組み合わせることが大切です。
量が多くても質が悪くては、タンパク質としての力を充分に発揮できず質が良くても今の身体に必要な量がなければ、たとえ筋トレをしても、筋肉はうまく増えてきません。
全てに言えることですが、ある1点に着目をし、それだけで決めつけてしまうのはよくありません。
何事もバランスよくが大切ですね。
執筆者
広瀬 陽香
(ひろせ はるか)
【セミナー】
・ヤングリーグ
大阪公立野球部
九州大学野球部
・水泳
選手や、ジュニア期(中学~高校生)アスリートの保護者の方など
【個人サポート】
・野球
全日本選手権出場
・バスケ
全国中学校バスケットボール大会優勝校
・陸上
日本インカレ出場選手
個人サポート・セミナーやSNSでの情報発信を通じて、ジュニア期アスリートの『成長』の大切さと”自ら考え、実践できる選手”が1人でも多く増えることをテーマとしてスポーツ栄養士として活動している。