【健康情報】「食中毒」にご用心!~食中毒の原因と予防~
梅雨に入り、ジメジメした不快な日が続きますね。
そんな中、気になり始めるのが食中毒です。コロナ禍でテイクアウトやデリバリーを利用する機会も増えました。食品の保存や調理法、消費期限にも気を使いますね。
今回は、食中毒の主な原因、種類と対処法についてお話しします。
食中毒の原因
食中毒の主な原因物質には、「細菌」「ウイルス」「寄生虫」「自然毒」などがあります。
それぞれの代表的なものは、
「細菌」・・・カンピロバクター、ウエルシュ菌、腸管出血性大腸菌(O157、O111など)、サルモネラ属菌、黄色ブドウ球菌
「ウイルス」・・・ノロウイルス
「寄生虫」・・・アニサキス
「自然毒」・・・毒キノコ、フグ
「細菌」の多くは室温(約20℃)で活発に増殖し始め、体温ぐらいの温度(約35~40℃)で増殖スピードが最も速くなります。
湿気を好むため、梅雨時期から暑い時期(6月~9月)に多く発生します。
「ウイルス」は食べ物の中では増殖しませんが、食べ物を通じて体内に入り、腸管内で増殖することで食中毒を引き起こします。
低温や乾燥を好み、寒い時期(11月~4月)に多く発生します。
「自然毒」や「寄生虫」は、季節を問わず一年を通して発生します。
次に、細菌やウイルス、寄生虫の中でも身近なカンピロバクター、ノロウイルス、アニサキスの症状と治療法、予防対策についてお話します。
食中毒の種類
① カンピロバクター
牛や豚、鶏、猫や犬などの腸の中にいる細菌です。細菌が付着した肉を生や加熱不十分で食べることによって食中毒が発生します。
特に多いのが鶏肉料理で、鶏レバーやささみなどの刺身、鶏肉のタタキなどを食べた場合に起こりやすく、1年を通して発生し、細菌性食中毒の年間発生数では常に上位を占めています。
少量の菌数でも発生しやすく、低温に強いため冷蔵庫内でも長期間生存するが、熱には弱いという特徴があります。
【症状】
□初期症状(食べてから1~7日)
下痢、腹痛、発熱、嘔吐、頭痛、筋肉痛、倦怠感など
□数週間後
ギラン・バレー症候群(手足の麻痺、顔面神経麻痺、呼吸困難など)を発症する場合もある
【治療法】
多くの場合は、治療しなくても1週間以内で治るため、対症療法がメインになります。
経口摂取可能であれば、経口補水液やスポーツドリンクなどで水分やミネラルをこまめに補給します。
固形のものであれば、おかゆなど消化の良い熱量になる炭水化物を少しずつ口にしましょう。お腹の調子が安定するまで、卵や魚などのタンパク質は控えたほうが良いです。
脱水症状が続けば、点滴による治療が必要です。
細菌が体外に出てしまえば治るので、腸内改善には下痢止めではなく整腸剤を服用します。
また、高熱や重度の下痢など症状が悪化する場合は、マクロライド系などの抗菌薬を服用します。
【予防対策】
□食肉は中心部までしっかりと加熱する(中心部を75℃で1分間以上加熱)
□食肉と他の食品との接触を避ける
□食肉を調理した器具は、使用後、洗浄、殺菌(熱湯消毒)を行う
□食肉に触れた後は、十分に手を洗ってから他の食品を取り扱う
▶アウトドアの機会が増え、バーベキューをすることも多くなりました。
焼き肉店でも同じ事ですが、肉は十分加熱してから食べるように心がけましょう。
② ノロウイルス
手指や食品などを介して、口から体内に入ることによって感染し、腸の中で増殖し、嘔吐、下痢、腹痛などを起こします。
ノロウイルスに汚染された二枚貝などの食品を十分過熱しないまま食べて感染したり、汚染された井戸水を飲んでの感染、感染した人の糞便や嘔吐物を介する二次感染を引き起こす場合もあります。
牡蠣を食べて調子が悪くなった、乳幼児の吐しゃ物を処理した後に家族そろって調子が悪くなってしまったという話をよく聞きます。
1年を通して発生は見られますが、例年多い時期は11月~5月です。
【症状】
□潜伏期間(感染から発症まで)は24~48時間
□吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、発熱などが1~2日継続
※症状がなくなっても、通常では1週間程度、長いときは1か月程度ウイルスの排泄が続くこともある
【治療法】
現状ワクチンや抗ウイルス薬がないので、通常は輸液などの対症療法になります。
嘔吐下痢を伴う脱水症状や体力消耗に対する治療は、整腸剤や輸液使用の判断はカンピロバクターと同様です。
【予防対策】
□丁寧な手洗い
トイレの後、食事前、トイレの後、下痢等の患者の汚物処理やオムツ交換を行った後
□加熱処理
二枚貝などの食品⇒中心部が85℃~90℃で90秒以上の加熱
まな板、包丁、へら、食器、ふきん、タオル等⇒85℃以上の熱湯で1分以上加熱
□殺菌消毒
次亜塩素酸ナトリウム[塩素濃度200ppm(0.02%)]で拭く
◎次亜塩素酸系消毒剤・・・ミルトン1%、ピューラックス6%
◎家庭用漂白剤・・・ハイター、キッチンハイター、ブリーチ(濃度はすべて6%)
▶アルコール製品が入手困難な時期に、次亜塩素酸ナトリウム製品は代用品として非常に注目されました。
以下の事柄に注意して適正に使いましょう。
♢製品ごとに濃度が異なるので、表示をしっかり確認し、目的に合った濃度に薄める。
♢使用の都度、必要な量を作るようにして早めに使い切る。
♢換気しながら消毒する。
③ アニサキス
アニサキスは寄生虫(線虫類)の一種で、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類の内臓表面に寄生しています。幼虫は長さ約2~3㎝、白色の少し太い糸状で、胃壁や腸壁に刺入して食中毒を引き起こします。
日本人の嗜好食である刺身や寿司など生食が原因で発生することがほとんどですが、加熱不十分、あるいは塩漬けや酢漬けの状態でも感染します。魚からの感染はサバが最も多いです。
【症状】
□急性胃アニサキス症(ほとんどの場合)
食後数時間後~十数時間後に、みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐を生じる
□急性腸アニサキス症
食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、腹膜炎症状を生じる
※蕁麻疹やアナフィラキシー症状を起こす場合もあり
【治療法】
胃アニサキス症では胃内視鏡での虫体摘出、腸アニサキス症では薬や点滴などの対症療法を行い、場合によっては外科的処置が施されます。
アレルギーに対してはステロイド薬、抗ヒスタミン薬などでの対処療法、アナフィラキシーの場合は緊急に医療処置を行います。
※人体に入っても通常1週間程度で死滅しますが、激しい腹痛があり、食中毒が疑われる場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
【予防対策】
□新鮮な魚を選び、速やかに内臓を取り除く
□目視で確認して、アニサキス幼虫を除去する
□冷凍する(-20℃で24時間以上)
□加熱する(70℃以上、または60℃なら1分)
▶一般的な料理で使う食酢での処理、塩漬け、醬油やわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しません。
ところで、下痢止めでおなじみの市販薬、大幸薬品の正露丸(第2類医薬品、含有主成分;木クレオソート)に、アニサキス症の症状軽減や発症予防効果が期待できるのをご存知ですか?
木クレオソートについては、アニサキス症の予防・症状改善のための薬剤としての活用に関する特許(特許第5614801号)を2014年に取得しています。
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)上の効能効果としては認められていませんが、通常の用法用量で、アニサキスの動きが鈍くなって痛みが和らぐ他、摘出が容易になるとのことです。
予防的に飲むのも良いですが、服用後は様子を見て医療機関での受診をお勧めします。
まとめ
食中毒予防の原則
原因菌を
「つけない(洗う、分ける)」「増やさない(低温保存)」「やっつける(加熱処理)」
原因ウイルスを
「持ち込まない(健康管理)」「ひろげない(手洗いと定期消毒)」「つけない」「やっつける」
原因となる菌やウイルスの特徴と対処法を理解し、食中毒をしっかり防ぎましょう!
執筆者
薬剤師
千代 淳美
(ちしろ あつみ)
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