記憶に新しいWBC 侍ジャパン優勝! 勝因の1つ 心理的安全性
侍ジャパン、おめでとう!
記憶に新しいWBC、優勝!数々の記憶に残る名場面。
私の記憶に残る名場面は、決勝でアメリカと対戦。
最後のバッターは、マイク・トラウト。ピッチャー大谷。
2人ともエンゼルスに所属する同僚です。最後の1球でトラウト、三振。何か漫画を見ているようなシーンでした。
さて、優勝から数か月が経ちました。
侍ジャパンの勝因を、冷静に考えてみました。
その1つは、「楽しむ」ということです。野球をすることを楽しむ。
ダルビッシュ有投手は、優勝後のインタビューで「楽しく野球をするところをファンに見てもらうことが大事」と述べています。
また、大谷選手も「楽しむ気持ち」を強調していました。
確かに、試合に勝つことは重要ですが、楽しめなかったらプレーしている本人も面白くないでしょう。
例えば、ヌートバー選手のペッパーミル(こしょうひき)パフォーマンス。
一気に、チームの中で、観客の中で、街で、このパフォーマンスが広がりました。
このようなパフォーマンスが飛び出た背景には、侍ジャパンの「心理的安全性」というチームの雰囲気があったからでしょう。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、チームの他のメンバーが自分の意見を否定したり拒絶したり、罰したりしないと思える状態を言います。
つまり、その組織の中で、誰に対しても、自分の意見や考えを安心して言うことのできる状態のことです。
この考えは、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソンが提唱しました。
いかに、組織を作り、生産性を高めていくかを考えたものです。
侍ジャパンの中にも「心理的安全性」が高まっていたと考えられます。
例えば、ヌートバー選手が侍ジャパンに合流した直後、
「ニックネームで呼んでくれることはうれしい。最初はもちろん緊張していたけど、楽になった。」と言って喜んでいました。
「たっちゃん!」このニックネームの一言でチームの一員に。
彼は、アメリカ育ちの日系人選手です。
彼自身もチームに打ち解けようとしたでしょうが、「たっちゃん」の一言で、チームが1つになりました。
また、大谷選手が若手に「ため口」での会話を呼び掛けたり、ベテランの選手が食事会を開催したりと、何でも言えて、話せる雰囲気ができたと言えます。
このように、いろいろな事、考えを受け入れる雰囲気が、優勝に導いた要因の1つだと思います。
この「心理的安全性」が、チーム作り、組織づくりに、重要になってくると思います。
確かに、組織の中で、チームの中で、対立することもあります。
しかし、それは組織、チームの生産性を高め、より強くなるための機会になると思います。
組織、チームの中で、「心理的安全性」を高めるためには、
①意見や質問など発言できる機会を同じように設けることです。
すなわち、メンバー皆が発言できるチャンスを作ることです。
②メンバーが発言した内容や行動を批判・否定しないことです。
つまり、何を言っても安心という雰囲気をつくることです。
③上司、監督にも何でも話せる、仲間同士でも先輩・後輩なく言いあえる雰囲気が大切です。
さぁ、侍ジャパンに続く、スポーツ、チーム、組織はどこでしょうか?
執筆者
川福医療福祉大学 医療福祉学部 臨床心理学科 教授
博士(心理学)
認定心理士
保野 孝弘
(ほの たかひろ)
川崎医療福祉大学では、心理学、睡眠学などを教えている。「わかりやすく」、「楽しい」講義を心掛けている。
また、地域貢献として、小中学校・高等学校、公民館に出向いて、「眠りの習慣と健康」について、子どもさんや保護者、ご高齢の方にお話ししている。
「もうちょっとだけ」の寝不足で、気づかないうちに・・
第1印象について