連載 ⑪ けが予防にも!子どもの運動神経を伸ばすコツ【子どもロコモを考える】
ケガをしにくい、運動神経がぐんぐん発達する土台を作るのは、専門的なトレーニングを行う前に取り組むべき事があります。
それは、子どもが笑顔で夢中になる“遊び”です。
子どもの運動神経の発達は、11歳まで盛んに行われます。この時期は、専門的なトレーニング以上に遊び感覚で夢中になる運動がとても大切です。
運動神経の発達に重要な”刺激”
子どもの運動神経の発達に重要なのが“刺激”です。
砂の上を走る
土の上を走る
泥の中を走る
石の上を走る
木の根がある中を走る
走って追いかける
走って追いかけられる
隠れながら追いかける
隠れながら追いかけられる
急斜面を登る
ハシゴを登る
木を登る
小さなボールを投げる
大きなボールを投げる
ジャンプする
飛び降りる
全て身体には違う刺激が加わります。
それぞれ身体が感じる刺激の違いは、
身体を扱う感覚の違いに繋がります。
“感じる感覚の違い”は“使う感覚の違い”に繋がります。
感じる感覚のレパートリーと使う感覚のレパートリーの数が運動神経を育みます。
これが子どもの今後の発達の基盤となり、
この発達が11歳まで盛んに行われているのです。
遊びは脳の発達にも影響を与える
遊びは単に運動神経の向上に留まらず、
脳の発達にも影響を与えます。
文部科学省では、外遊びによって期待できる効果を下記の様に紹介しています。
期待できる効果
①体力・運動能力の向上
②健康的な体の育成
③意欲的な心の育成
④社会適用能力の発達
⑤認知適用能力の発達
外遊びは運動神経に留まらず、健康的で病気に対する抵抗力の強い体や意欲的な心や脳の発達、社会性にも影響を与える事が記されています。
子どもの外遊びの減少
子どもの発達にとって重要な外遊びはこの数十年で減少しています。
子どもの外遊びの減少に対し啓蒙活動を行っている団体
【子どもの健全な成長のための外遊びを推進する会】ではホームページで以下の情報を公開しています。
2016年に実施された、小学校高学年を対象にした調査によると、子どもたちが外あそびに費やす時間は、1981年の2時間11分から、2001年には1時間47分、2016年には1時間12分と、35年間で30%以上減少しました。
2009年度から2018年度にかけ、1歳〜6歳までの保育園に通う幼児を対象に、外あそびの時間を調べた調査※2(詳細はこちら)においても、年齢・性別に関わらず、その平均値は概して30分以下となっていました。
また降園後の外あそび時間が60分を超える幼児の割合は、男女ともに10〜20%に留まっていました。
•※1 https://www.citizen.co.jp/files/20160524.pdf
•※2 髙橋昌美, 2020, 「幼児の生活と余暇時間の過ごし方および健康管理上の課題」, 2020年度早稲田大学博士論文
【子どもの健全な成長のための外遊びを推進する会】
ホームページより
https://kodomo-sotoasobi.com/kankyo/genjo.html
子どもの発達にとって重要な“外遊び”ですが、この外遊びがここまで減少しています。
全国地域育整協会では、子どもの発達、成長の視点からもゴールデンウィークや夏休みなど、家族での外出時にはフィールドアスレチックや遊具の豊富な大型公園、川や海、泥遊びや土遊びなど自然に触れ合いながら外遊びができる時間をすすめています。
まとめ
子どもの運動神経を考える時に、専門的なトレーンングを求めがちですが運動神経の土台には外遊びがあり、外遊びの経験が子どもにとってかけがえのない財産になる事を再確認しましょう。
執筆者
有限会社 ユ・アース 代表取締役/一般社団法人 全国地域育整協会 代表理事/安川接骨院グループ 総院長
安川 元也
(やすかわ げんや)
【トレーナー】
競泳選手(国際大会メダリスト、日本選手権メダリスト)
【講演・講師】
東京都立川市 チヨダ地域保健推進賞講座
東京都立川市 健康推進課主催講座
東京都青梅市 保育士連合会研修
埼玉県飯能市 スポーツ少年団指導者講習
埼玉県深谷市 体育協会主催研修
東京都軟式野球連盟 公認野球指導者講習
その他首都圏を中心に【子供のロコモ予防、子供のケガ予防】をテーマに教育機関、公的機関で講師を勤める
【連載 子どもロコモを考える】⑧なぜスポーツが原因で、子どもの身体にトラブルが起きるのか
子どもロコモを考える⑨ 【スポーツで身体を壊させないために親御さんができること①】