連載 ⑧ スポーツ現場で子どものケガを防ぐ!体力低下の影響とは?【子どもロコモを考える】
前回のコラムでもお話ししましたが、子どもの骨には軟骨層があり、この部位は通常の骨の部位に比べ強度が低く注意が必要です。
スポーツチームへのヒアリングや、全国の接骨院の先生へのヒアリングで、この軟骨層の損傷が地域のスポーツチームで、増加傾向にある事がわかりました。
この原因には【子どもの体力の低下】が関係しています。【体力】とは単なる持久力の事ではありません。
この図は体力の構成を表している表です。
ここから分かるように体力とは様々な機能に関係します。
まさに【生きる上で大切な体の総合力】です。
現代の子どもはコラム1、コラム2でお話ししたように様々な習慣、環境の変化から身体が弱くなり、体力(総合力)が低下しています。
子どもの体力低下による影響
この影響を最も受けているのがスポーツ現場です。
今スポーツ指導の現場では、体力の低下に困惑しながら活動を行っています。
子どもに競技力をつけさせる為、練習量を増やせば【ケガ人が増える】
子どもの体力に合わせて、練習量を減らせば【試合や大会で結果が出ない】
子ども一人一人の体力レベルに、あまりにも差がありチームとしてどの様にトレーニングを行うことが正解か?
手探りで行っているのが現状です。
子どもの体力は栄養の影響も大きいですが、それと同じ位大切なのが遊びを通じて身体を動かせる環境です。
スポーツを行う上での体力は、この様な段階構成で培われています。
外遊びや、レクレーション感覚の運動・スポーツが減少することで子どもの体力の土台は骨抜き状態になっています。
土台がない状態で各スポーツの競技に特化したトレーニングを行ってもケガに繋がってしまいます。
スポーツが原因で子どもの軟骨の怪我が増えているのは子どもの体力低下と、弱くなっている子どもの身体にコーチ人の理解が追いつかないこのアンバランスが背景にあります。
子どもの身体の状態を知る
全国地域育整協会では【アスリートの通信簿】という子どもの成長環境を可視化できるツールを使い、全国の接骨院や各地域のスポーツチームで子どもの現状をしっかり認識し、そこから“各家庭”と“チーム単位”での改善方法を支援する活動を広めています。
スポーツチームの理想的なモデルケース
今後子どもの体力の低下を改善し成長に大切な軟骨のケガを減少させるにはスポーツチーム、保護者、医療機関が密に連携することがとても重要です。
千葉県東金市で活動するバレーボールチーム【Hoppers】では子どもの体力低下にいち早く危機感を感じた監督が選手、保護者、チーム、トレーナー、プロバレーボール選手この5者が連携できるモデルを作り、子どもの体力向上に取り組んでいます。
ここで5者が共有する情報が【アスリートの通信簿】です。
この見える化を用いながら、各子どもの課題を把握し子ども自身が自分で課題に取り組み、周囲の大人がその取り組みの背中を押す支援をする。
地域のスポーツチームでは、考えられない様な活動を構築しています。
子どもの体力低下、子どものロコモへの意識がもっと普及し全国でもこの様な活動モデルが広がる事を切に願います。
執筆者
有限会社 ユ・アース 代表取締役/一般社団法人 全国地域育整協会 代表理事/安川接骨院グループ 総院長
安川 元也
(やすかわ げんや)
【トレーナー】
競泳選手(国際大会メダリスト、日本選手権メダリスト)
【講演・講師】
東京都立川市 チヨダ地域保健推進賞講座
東京都立川市 健康推進課主催講座
東京都青梅市 保育士連合会研修
埼玉県飯能市 スポーツ少年団指導者講習
埼玉県深谷市 体育協会主催研修
東京都軟式野球連盟 公認野球指導者講習
その他首都圏を中心に【子供のロコモ予防、子供のケガ予防】をテーマに教育機関、公的機関で講師を勤める
【連載 子どもロコモを考える】⑦スポーツ現場で増えている子どものケガ
【連載 子どもロコモを考える】⑥「子どもの身体を強くさせる体操-2」