「もうちょっとだけ」の寝不足で、気づかないうちに・・
「あぁ~、よく寝た~」
お正月、仕事も予定もない私。普段よりも、長く眠る。
普段はだいたい夜1時に就寝、朝6時ごろに起きるから休日以外の睡眠時間は約5時間だな。
皆さんの中にも同じような方がいらっしゃると思います。
この方の普段の睡眠時間は約5時間のようですが決して十分な睡眠時間とは言えません。
気づかないうちに「もうちょっとだけ」程度の寝不足が溜まっていくこと。
これを睡眠負債と言います。借金が溜まっていくようなイメージですね。
この睡眠負債が溜まっていくと、心身にどのような影響がでてくるのでしょうか?
主なものを3つご紹介します。
1つは、マイクロスリープ。
マイクロスリープとは、短ければ数分の一秒、長くても30秒程度睡眠状態に陥ることを言います。
例えば、車を運転している時に一瞬寝落ちしてしまうように、瞬間的に眠ってしまうのです。
とても危険ですね。マイクロスリープに襲われた時、たまたま信号機が赤、ストップ!
しかし、一瞬の寝落ちで交差点へ侵入。事故につながるかもしれません。
マイクロスリープに陥った時は、確かに眠っている時の脳波が見られます。
2つ目は、認知症の発症リスクが高まると言われています。
認知症の方の脳を調べると、アミロイドβという老廃物が溜まっていることが知られています。
昼間に溜まった老廃物を、睡眠中に外に排出すると考えられているのですが、
眠りが短いと老廃物を脳の外に追い出すことができません。
ある研究では、40~50歳代の方で睡眠時間が7~8時間の人と比べて、睡眠時間が7時間未満の人の認知症の発症リスクは1.59倍となっています。
そして、3つ目は、生活習慣病の発症リスクが高まることも知られています。
睡眠負債を返すには?
では、どのくらいの期間で睡眠負債を返すことができるのでしょうか?
【ある実験をご紹介】
男子大学生10名が参加。この10名の普段の睡眠時間は、平均7.5時間です。
そこで、朝になっても14時間はベッドの中で強制的に横になっていてもらいます。これを毎日繰り返したのです。毎日がお正月状態ですね。
その結果、最初は平均で13時間、10時間と徐々に短くなっていきました。そして、とうとう8.2時間ほどとなり、それ以降は変化がなかったのです。
つまり、普段の平均睡眠時間が7.5時間から8.2時間で落ち着いたと言えます。
普段から約40分短い睡眠で暮らしていたことになります。
そして、徐々に睡眠負債を返してきたと考えられます。
では、8.2時間睡眠で落ち着くまでに何日かかったと、皆さんは予想されますか?
なんと21日間です。睡眠負債を返すのに21日!
皆さんが普段の生活の中で、約20日間も実験のような“お正月状態”は作られませんよね。
どうしたらいいの?
そこで、まず普段の日に睡眠時間を記録。そして、お休みの日にどのくらい眠ったかを記録。もし、お休みの日に普段と比べて長く眠っていれば、睡眠負債が溜まっている可能性があります。
毎日20~30分程度、睡眠時間を長くとって昼間の心身の状態を観察します。眠くもなく、あくびもほとんどなく、快適に過ごせたら、あなたにとって最適な睡眠時間と考えられます。
普段から少し長めの睡眠時間を取ってみてはいかがでしょうか。
仕事や、学校が始まる時間は決まっていると思いますから、睡眠時間を少し伸ばすためには、いつもよりも早めに寝るほうが良いでしょう。
睡眠負債を溜めないで、快適な毎日を!
執筆者
川福医療福祉大学 医療福祉学部 臨床心理学科 教授
博士(心理学)
認定心理士
保野 孝弘
(ほの たかひろ)
川崎医療福祉大学では、心理学、睡眠学などを教えている。「わかりやすく」、「楽しい」講義を心掛けている。
また、地域貢献として、小中学校・高等学校、公民館に出向いて、「眠りの習慣と健康」について、子どもさんや保護者、ご高齢の方にお話ししている。
感情労働のストレスよ さようなら!
お世話になっている人に「ありがとう」、いつも心に「ありがとう」