減量に水中での運動がおすすめな理由
皆さんこんにちは。
前回のコラムでは減量における有酸素性運動の役割と取り組み方について解説しました。
今回は減量のための有酸素運動として、水中での運動がおすすめな理由を解説します。
「減量のために最も効果的な運動は?」の問いに答えるのは簡単です。
答えはズバリ、水中での運動です。水中での運動にはウォーキングやサイクリングなど、ダイエットによく使用される運動よりもメリットが数多くあります。
水中の身体は水の物理的特性である以下の要因の影響を受けます。
身体が影響を受ける水の物理的特性は①浮力、②水の抵抗、③水圧、④水温の4つです。
①浮力
浮力は水に浸かった部分の体積に比例して大きくなります。
腰まで水に浸かることで体重は約半分になり、首までの浸水で体重は陸上の10%程度まで軽減されます。
そのため、膝や股関節にかかる負担が大幅に軽減されます。
陸上で行うウォーキングやジョギングなどと同等の強さの運動を、関節に負担をかけることなく実践できることは足腰に自信がない方にとっては大きなメリットになります。
また、浮力の影響で重力に対抗するための筋肉の緊張が解け、関節の可動範囲が広がります。
(※水泳を行う場合、平泳ぎの足運びは、膝や股関節に負担がかかるため、注意が必要です)
②水の抵抗
水の抵抗は水中での移動速度の2乗に比例して大きくなります。
水中で体を動かすスピードを調整することで運動の強さ(弱さ)を容易に調整することができます。
腕や脚の動作の調整や、動かす速さの調整、身体の移動速度の調整により、有酸素運動から、筋力トレーニングまで幅広い負荷の運動を行うことができます。
③水圧
水圧の影響で、下半身の血管から心臓へ戻ってくる血液の流れが促進されます。
そのため、心臓から送り出される血液の量が増加し、心臓や血管にかかる負担が軽減されます。
ただし、心臓が完全に浸水するような水位(首程度)では、心臓や肺にも水圧がかかり、負担が増してしまうため注意が必要です。
また、この心臓や血管への水圧の影響は最終的に血管内の水分を尿として排泄し、血液の量を減らすことで調整されます。
したがって、水中での運動を行った後にはしっかりと水分補給を行うことが大切です。(入浴後も同様です)
④水温
水温は一般的な温水プールであれば30℃前後に管理されています。
体温よりも低い水温に浸かることで、少しずつ体温が奪われていきます。
水に奪われた体温を回復するために、身体は代謝率を増加させます。
そのため、運動自体のエネルギー消費に加えて、体温保持のためのエネルギーを上乗せして消費できることを意味します。
この余分なエネルギー消費、は体内の糖や脂肪を消費することにつながるため、ダイエットにとって大きなメリットであると言えます。(※水温が体温と同等の場合は代謝率の増加は見込めません)
水中で運動することで、関節や心臓に負担をかけず、有酸素運動と筋力トレーニングを同時に行うことができ、多くのエネルギーを消費(糖や脂肪を燃焼)することができます。
減量を目標にしている人には水中での運動をお勧めしたいところですが、水中で運動するためには様々なハードルがあることも事実です。
次回のコラムではウォーキングやサイクリングなど、ダイエットに一般的に用いられる有酸素運動について、メリットやデメリット、取り組み方のポイントについて紹介したいと思います。
健康体力づくり事業財団, 「健康運動指導士養成講習会テキスト 上巻」, 南江堂, 231-232, 275-281, 2020.
健康体力づくり事業財団, 「健康運動指導士養成講習会テキスト 下巻」, 南江堂, 491-499, 2020.
執筆者
川福医療福祉大学 医療技術学部 健康体育学科 純教授
川崎医科大学附属病院 健康診断センター 健康運動指導士
博士(健康科学)
日本陸上競技連盟公認審判員
全日本スキー連盟公認スキー準指導員
脇本 敏裕
(わきもと としひろ)
岡山県倉敷市にある川策医療福祉大学で健康づくりのための運動指導のスペシャリストである健康運動指導の養成に従事しています。川崎医科大学附属病院健康診断センターでは健康運動指導士として健康づくりのための運動指導に従事しています。
“基礎代謝は上げられる?上げられない?
減量における有酸素性運動の役割と取り組み方