連載 ② 子どもの身体が弱くなった背景とは?食と運動の変化を解説 【子どもロコモを考える】

記事

子どもの身体はなぜここまで弱くなったのでしょうか?

日々接骨院で子どもたちの身体や生活環境を観察していると2つの共通点に気づきます。

  • 食の変化
  • 運動環境の変化

1つずつその変化を掘り下げていきましょう。

食の変化

このグラフは子どもに必要な栄養量と実際に食べている栄養量を比較したグラフです。このグラフからわかるように必要な栄養素が全く足りていないのが現状です。


データで見る子ども達の実情

全国地域育整協会では2019.2.9に東京都立川市「児童館フェスティバル」にて子どものカルシウム摂取量 を調査しました。


(評価方法:カルシウム評価シート【骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年度より】)
(小学生1~4年生・調査人数25人)


800mg以上・・・2人
700mg以下・・・4人
600mg以下・・・9人
500mg以下・・・6人
300mg以下・・・4人

この調査ではカルシウム摂取基準の半分以下のレベルが約40%近くいる事がわかりました。

当協会でもスポーツを行っている子どもたちに対しても栄養の摂取状況を調査していますが同様に栄養不足はとても深刻な状況です。カルシウム以外では鉄分、タンパク質の栄養不足も強い傾向にあります。

カルシウム、鉄分、タンパク質…この3つの栄養素は成長期の身体作りになくてはならない栄養素です。特に大切なこの3つの栄養素が、これだけ不足している状況にはどの様な要因があるのでしょうか。

子どもに必要な栄養が不足している背景

東京都立川市で行った調査ではカルシウム摂取量が少ない要因として
・お母さん側
「乳製品アレルギーがある」
「単純に意識していない」
「摂り方が分からなかった」



好き嫌いや食べ残しで栄養が不足する子ども

・子ども側
「嫌いな食品がある」
「食べられるけど食べてなかった」

などの声が多い傾向に有りました。

  • 栄養摂取への意識自体がなかった場合
  • 摂取する為の食品や方法が分からない場合
  • 子どもが食べてくれない場合

大きく分けるとこの3点に集約しています。

ですが最も多い回答はこの3点では有りません。この調査以外にもお母さん達へのヒアリングで最も多く聞かれるのが「作る労力がない」「口にしてくれるけど量を食べてくれない」この2点が最も多く聞かれます。
作ったご飯を食べてくれない子ども

この2点は悪循環にあり、やっとの思いで作ったご飯でも子どもが食べずたくさんの残飯を見るこの繰り返しでお母さんの心は疲弊しています。

栄養の改善は「お母さん手作りで頑張りましょう」「品数多く作りましょう」などお母さんの労力が増える取り組みが基本となってしまいます。ですがただでさえ疲弊しているお母さんに「もっと頑張ろう!」と言うのは継続して習慣化することが重要な栄養面ではなかなか効果的な改善策では無い様です。


食の問題はこれだけではなく偏食、孤食、欠食など本当にさまざまで根深い問題です。栄養の問題は単に栄養の必要性を啓蒙するだけではなくお母さんへの多様な支援が大切だと現場では感じます。

運動環境の変化

子どものいない公園

運動と言うのはスポーツや体育などを示すわけではなく子どもの場合登下校の歩行や遊びも含まれます。

1980年代にNHKが小学5年生の生活歩行数を調べた調査があります。その歩数は約22,000歩です。今の小学生の平均歩数は約10,000歩(H20年 明石 千葉大学より)活動量は半分以下になりました。


さらに今でも国民の平均歩数は緩やかな減少傾向にあります。首都圏を中心に外遊びも確実に減少しています。2018年10月19日日刊工業新聞に掲載された記事によると幼児~小学生保護者389名を対象に子どもの外遊びを調査したところ (一般社団法人YBP  PROJECT調査)86%の保護者が「子どもの外遊びが減少した」と回答しました。


虫と触れ合う子どもも減る外遊びはスポーツと違った不規則に動き、さまざまな遊具を利用してその日その日の遊び方をする。自然を相手にすれば、木が水が土が虫や動物が多種多様の刺激を与えてくれます。子どもの成長にはこの多種多様な刺激が必要です。


さまざまな刺激を目や耳、鼻、肌や筋肉、骨、で感じ反応し動く。この中で肉体的にも精神的にも“幅”のある安定した成長をするのです。

外遊びで期待できる効果

  1. 体力・運動能力の向上
  2. 健康的な体の育成
  3. 意欲的な心の育成
  4. 社会適応力の発達
  5. 認知的能力の発達>
文部科学省:平成24年3月【幼児期運動指針】幼児期運動指針策定委員会


歩行数と外遊びの減少は、確実に子どもの成長力を低下させています。この背景から子どもの身体が弱くなる環境の要因が読み取れます。

しかし子どもの身体の変化はこれだけではありません。

体型にも影響が表れるように

肥満児の増加

食の変化と運動環境の変化は肥満の増加にも繋がっています。肥満は1977年から2006年にかけて約2倍に増加しています。


今では平行線になっているものの、子どもの10%に迫る8.1%が肥満の現状は決して楽観視できるものではありません。子どもの肥満は両親の体型が強く反映することが分かっています。


父-母両者が肥満の場合、子供の肥満率は80%
母親が肥満の場合の肥満率は60%
父親が肥満の場合の肥満率は40%
とデータが出ています。(神奈川県教育委員会研究委託 神奈川県医師会【子供の肥満と生活主観】より)

肥満は将来さまざまな怖い病気の原因となります。それが子どもの時から起きる意味はとても大きい問題です。さまざまな側面から見ても子どもの身体への取り組みは必要至急の問題です。次回からは家庭でできる改善方法に話を移していきます。




執筆者

安川 元也有限会社 ユ・アース 代表取締役/一般社団法人 全国地域育整協会 代表理事/安川接骨院グループ 総院長

安川 元也

(やすかわ げんや)


【トレーナー】

  • 競泳選手(国際大会メダリスト、日本選手権メダリスト)

 

【講演・講師】

  • 東京都立川市 チヨダ地域保健推進賞講座

  • 東京都立川市 健康推進課主催講座

  • 東京都青梅市 保育士連合会研修

  • 埼玉県飯能市 スポーツ少年団指導者講習

  • 埼玉県深谷市 体育協会主催研修

  • 東京都軟式野球連盟 公認野球指導者講習


その他首都圏を中心に【子供のロコモ予防、子供のケガ予防】をテーマに教育機関、公的機関で講師を勤める




【連載 子どもロコモを考える】①子どもの“身体”の今


自分の肩こりはどのタイプ?原因を探って肩こり解消




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