連載 ① 成長真っ盛りの子どもの身体に迫る危機とは?【子どもロコモを考える】
丸い背中で画面に前のめりの子供たち
携帯ゲームやスマートフォンを持っている事があたりまえ
暇があれば画面に向かっている子ども達
木登りなど自然の中で遊ぶ機会も減り、外で泥だらけで遊ぶ子どもの姿も“昭和姿”となりました。
子ども達が足を投げ出し背中を丸くして座る姿も見慣れた風景になりつつあります。
私たち“親”世代が育った当たり前の環境は今や一変しました。
親達の当たり前が当たり前じゃなくなった子ども達を取り巻く“環境”
この影響は子ども達の身体に徐々に変化をもたらしています。
成長真っ盛りの子どもの身体に迫る危機
ロコモティブシンドロームと言う言葉をご存知ですか?
これは介護予防の分野で使われる言葉です。
通称“ロコモ”
骨や関節、筋肉が弱くなることで姿勢や日常動作に支障が生じ、転倒やケガをする可能性が高く介護を必要とする一歩手前の状態。
ロコモはそんな要介護予備軍を表す言葉です。
今、この言葉が子ども達に使われています。
“子どものロコモ”とは、成長と共に発達する骨や関節、筋肉、運動機能、骨格の成り立ち、これが生活習慣や環境の影響でブレーキがかかりケガや身体のトラブルが強く心配される状態を表します。
10人中4人(NPO法人 全国ストップザロコモ協議会 「これからは知っておきたい!子どもロコモ読書」より )
これが今“子どものロコモ”が心配される子どもの割合です。
医療現場や教育、スポーツ指導ではすでに
この数字が示すことの重大さを痛感させる現象が起きています。
- 肩と背骨が硬くてバンザイができない
- 足首が硬くてしゃがめない
- 股関節が硬くてあぐらがかけない
- 自分の体重を支えられない
- 転倒しても受け身が取れない
これは地域の接骨院に来院する子どもに見られる共通点です。
このような状態が土台にある身体は、軽度で済むはずのケガが重症化したり、慢性化してしまいます。
その結果が骨折の増加。
1978年から2016年までの40年間で子供の骨折は3倍に増えました。(独立行政法人日本スポーツ振興センター 【学校の管理下の災害-基本統計】 中学生の骨折)
スポーツ現場では
「子どもがすぐ怪我をするので専門的トレーニングができない」
「メンタル的にも弱い子どもたちが増えた」
「自分の意志や意見をもっている子どもが少ない」
本来スポーツを教えるチームが
「競技を教える前段階、子どもたちの身体の弱さを補う"補強"しか出来ない」
こんな声も珍しくありません。
「試合に勝つために練習を強化すればケガ人が続出、結果を問われる」
「ケガをしないように練習のレベルを下げれば、試合に勝てず責任を問われる」
子どもたちを指導するコーチ達もこの状況に本当に困惑しています。
教育現場では
「刺激に敏感な子」
「すぐキレる子」
「休み明け体調不良を訴える子」
「猫背の子」
「動きがぎこちない子」
「アレルギー」
「疲れやすい」
「じっとしていない」
(保育・教育現場で「最近増えている」と実感している事)
引用論文【子どもの“からだのおかしさ”に関する保育・教育現場の実態:「子どものからだの調査2015」の結果を基に】
医療現場、スポーツ現場、教育現場、それぞれ子どもの関わる立ち位置が違っても見えてくる子どもの“身体”の今。
「この子ども達がこのまま大人になったら・・・」
各現場に携わる関係者は常にこの不安感を感じ子ども達に接しています。
今からでも遅くない、親や周りの大人ができること
今子ども達の環境や変化を“時代”という言葉で片付けてしまいがちです。
ですがこの“時代”を作ったのは私たち大人です。
私たち大人が狂わせてしまった“時代”
ですがこの狂いを改善できるのも私たち大人です。
今各機関が連携し地域が1つのなってこの問題に取り組むことが求められています。
執筆者
有限会社 ユ・アース 代表取締役/一般社団法人 全国地域育整協会 代表理事/安川接骨院グループ 総院長
安川 元也
(やすかわ げんや)
【トレーナー】
競泳選手(国際大会メダリスト、日本選手権メダリスト)
【講演・講師】
東京都立川市 チヨダ地域保健推進賞講座
東京都立川市 健康推進課主催講座
東京都青梅市 保育士連合会研修
埼玉県飯能市 スポーツ少年団指導者講習
埼玉県深谷市 体育協会主催研修
東京都軟式野球連盟 公認野球指導者講習
その他首都圏を中心に【子供のロコモ予防、子供のケガ予防】をテーマに教育機関、公的機関で講師を勤める