運動で脳を鍛える!? ~運動と脳の機能にまつわる最新情報~
皆さんこんにちは。
皆さんは「運動と脳の機能」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
運動と脳の機能、一見、関係性を見出すことが難しい2つの要素ですが、最近の研究で両者の間に密接な関係があることが分かってきました。
近年の分析技術の発達で、運動が脳に与える影響が次々と明らかにされています。
今回は、運動が脳に与える影響をご説明したいと思います。
子供たちの学力と体力に相関関係があることは古くから明らかにされていました。
2004年にカリフォルニア州で行われた調査では、運動能力がすぐれた子どもは学力テストの成績もよいことが示されました。
わが国においても国語や算数(数学)の学力と体力との間に関係があり、体力の高い子供たちの方が学力が高かったことが報告されています。
また、高齢者においては認知症と運動習慣の関係が明らかとされており、運動習慣がある人ほどアルツハイマー型認知症発症のリスクが低いことが明らかにされています。
子供たちから高齢者に至るまで、運動は脳の機能に良い影響を与えるようです。
では、運動は脳にどのように作用するのでしょうか?
子供時代の脳の発育・発達
脳を含む神経系は幼児期から児童期にかけて急速に増加し、12歳ごろまでにほぼ成人の大きさにまで発育します。
脳を含む神経系の重量が著しく増加するのはこの時期のみで、それ以後は神経系の重量は大きく変化しません。
この時期に様々な運動に挑戦することで神経系の発育・発達が促され、学力に好影響を与えるだけでなく、数十年後の脳の機能にまで良い影響を与えると考えられています。
幼児期から小学生期は様々な動作や運動を修得するのが大変得意な時期で、見よう見まねでどのような動作も修得できると言われており、ゴールデンエイジと呼ばれています。
この時期には一つのスポーツや動作を繰り返すのではなく、様々なスポーツや動作に挑戦するとよいでしょう。
運動の刺激は筋肉の血流を増加させるだけではなく、脳の血流をも増加させ、脳の発育・発達を促すとともに、気分や集中力を高める効果もあります。
勉強前にわずかな時間でも体を動かすことで、集中力が高まり、勉強の効率や記憶力が高まる効果があると言えるでしょう。
また、10代でしっかりと体を動かしていた人は高齢期の認知機能が良好に保たれることも明らかとされており、子どもの頃に活発に体を動かしておくことは将来的な認知症のリスクを低下させることにも効果があるようです。
大人の運動が及ぼす脳への効果
それでは、大人の運動は脳にどのような影響を与えるのでしょうか?
子供たちと同様に、成人においても運動することで脳の血流が高まったり、脳内の神経伝達物質の分泌が活発になることが知られています。
特にジョギングやウォーキングのような有酸素運動が脳に好影響を与えることが明らかとされており、認知症の発症を抑制したり、認知症の前段階である軽度認知障害が改善する効果が期待できます。
また、運動は脳の血流を増加させる効果を介して、一時的に気分を改善することも知られており、運動には抑うつ状態を改善する効果もあるといわれています。
まとめ
これまで減量や筋力トレーニング等の話題をご説明してきましたが、今回は運動が脳に与える影響を紹介しました。
運動することで気分が良くなり、判断力などの機能も向上させることができます。運動で脳を鍛えることを意識して、体を動かしてみてはいかがでしょうか。
〈参考文献〉
健康体力づくり事業財団, 「健康運動指導士養成講習会テキスト 上巻」, 南江堂, 149-154, 2022.
健康体力づくり事業財団, 「健康運動指導士養成講習会テキスト 上巻」, 南江堂, 327-334, 2022.
執筆者
川福医療福祉大学 医療技術学部 健康体育学科 純教授
川崎医科大学附属病院 健康診断センター 健康運動指導士
博士(健康科学)
日本陸上競技連盟公認審判員
全日本スキー連盟公認スキー準指導員
脇本 敏裕
(わきもと としひろ)
岡山県倉敷市にある川策医療福祉大学で健康づくりのための運動指導のスペシャリストである健康運動指導の養成に従事しています。川崎医科大学附属病院健康診断センターでは健康運動指導士として健康づくりのための運動指導に従事しています。
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