東洋医学からみた産後ママのからだ

記事

女性にとって『妊娠/出産』というビッグイベントは体に大きな負荷をかけています。


それにもかかわらず赤ちゃんのことが最優先でママは自分の体のことは後回しになりがち。


このコラムでは東洋医学からみた産後ママの体について説明します。


産後の体について知ることで、産後ママをもっと大切にしてあげてくださいね。

2つの医学

みなさんの健康、そして、病気の治療に関わる医学は現在の日本では大きく2つに分かれています。


それは現代医学伝統医学です。


現代医学は主に病気を扱う西洋医学です

体の病気の部分に集中して診察・治療をします。


伝統医学は身体全体のバランスを整えることで、体が本来持っている自然治癒力を高めようとする東洋医学です

鍼・灸・マッサージ・漢方、ツボや経絡といったお話はこちらの東洋医学になります。


東洋医学がどういうケースに対応できるかというと、病気の治療だけでなく、「薬を使いたくない」「なんとなく調子が悪いかな?」「病院に行くほどではない」といった予防や養生のときにも東洋医学は役に立つのです。

産後ママの体・東洋医学的な考え方

さて、妊娠出産は女性の体の仕組みの一つで、病気ではありません。


ですから健康な女性の場合、本来ヒトが持っている力を引き出す東洋医学は妊娠出産に大いに役立つことが期待されます。


産後ママの体を東洋医学から考えるとどうなっているのでしょう。


東洋医学の言葉で、産後の体を表現すると『気血両虚(きけつりょうきょ)』という言葉で表すことができます。東洋医学は独特の用語が多いですが、「気」と「血」が両方とも足りない状態という言葉です。

簡単に言うと“体がボロボロの状態”という意味になります。産前産後では、気と血の両方を大量に消耗するので、このように表現されます。


東洋医学では、「気」と「血」で体が作られていると考えられています。


まず、「気」とは、生命活動の源であるエネルギーのことを示します。生命力ともいえます。

「血」とは、血液そのものだけでなく、全身に栄養と潤いを与えたり心を安定させたりするはたらきのこともいいます。


この気と血はそれぞれ相互に作用しており、バランスを取り合っている状態が一番いい状態とされます。

産前産後の気血の消耗

女性は産前産後で「気」と「血」を大量に消耗します。


産後は、気と血の不足から身体だけでなく精神的にも不安定になりやすいです。


【産前産後の気の消耗】

出産はフルマラソンを走るほどの体力を奪うといわれています。出産後は、休む暇のない赤ちゃんの世話をする日々が続きます。産後の夜間授乳や夜泣きによる寝不足、精神的なストレス、不安感などでも気を消耗します。このように、産前産後で気を大量に消耗するにも関わらず、回復する時間がないため、エネルギーが足りない状態が続きます。


【産前産後の血の消耗】

妊娠中は、お腹の赤ちゃんにも栄養を与えるために、胎盤へママの血液を送り続けます。そして、出産では出血を伴います。出産後の体調チェックでは、「貧血」と診断されるママも多いです。また、産後の母乳育児でも、母乳はママの血液からできているので、貧血の状態にもかかわらず、引き続き、血を消耗することになります。加えて、育児情報を集めようとしてスマホの使い過ぎも血を消耗させます。東洋医学では目と血はお互い影響を受けやすいという関係性があるため、目の使い過ぎも血を消耗する原因となります。

産後に多いトラブル

気と血が不足した体ではさまざまなトラブルが起こりやすくなります。


肩こりや腰痛、肌荒れや抜け毛といった体の不調だけでなく、イライラする、不安や落ち込み、孤独感といった心の疲労も気と血の不足が原因で起こります


出産は命がけ、ママの生命力を子どもに与えると言っても過言ではありません。


ですから昔から「産後の床上げ」といって、産後のダメージを負った女性は療養のために1か月くらい布団は敷いたままでいつでも休めるように過ごしましょうと言っていました。

産後はストレスがかかりやすい

最後に、産後のママを取り巻く環境についてお話します。


産後は生活スタイルの変化が大きく、ストレスがかかりやすい環境です。


具体的には、「育児のため仕事をやめた」「社会から切り離され、赤ちゃんとふたりきりで過ごす時間が多い」 「赤ちゃんの世話で十分な睡眠がとれない」「なかなか自分だけの時間がとれない」「周囲のサポートを得られない」といったことが挙げられます。


そして、感染症の不安から外出できない、人と会うことが難しいといったストレスも現在の産後ママには重なっています。

産後ママは体を大切にしましょう

これまで、産後の体の変化を東洋医学の観点からお伝えしてきましたが、産後ママの体がどれだけダメージを負っているか、療養が必要か分かっていただけたでしょうか。


とはいえ、分かっていても産後ほとんど休まずに頑張って子育てをしているママがとても多いです。


ぜひ、1日のうち少しの時間でもいいので、まずは産後ママの体と心が回復するように「体を大切にする」という意識を持ちましょうね。



執筆者

近藤治療院 院長

鳴島 友理

(なるしま ゆり)


【資格】

  • はり師・きゅう師免許 平成16年厚生労働大臣認定資格取得

  • 大師流小児はりの会 上級課程修了

  • 認定子育てハッピーアドバイザーHAT認定資格取得


【所属】



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