“座りすぎ”は体にわるい!? ―「座位行動」の最新情報―

記事

皆さんこんにちは

「一日に何時間座って過ごしていますか?」この問いにあなたは答えられますか?


運動不足が様々な悪影響を身体に及ぼすことは、皆さんもよくご存じだと思います。

最近の研究で“座りすぎ”が身体に悪影響を及ぼすことが明らかにされています。

今回は新しい健康課題として注目されている“座りすぎ”についてご説明します。

座位行動

“座位行動”聞きなれない言葉だと思います。

まずは座位行動の定義を説明いたします。厚生労働省のHPによると「座位、半臥位(はんがい)、もしくは臥位の状態で行われるエネルギー消費量が1.5メッツ(※注)以下のすべての覚醒行動」と定義されています。


※注:メッツとは座位安静時を基準にした場合のエネルギー消費量のことで、1.5メッツ以下の行動は座位安静状態の1.5倍までのエネルギーを消費する行動のことを指します(立ち話は1.8メッツ)。


簡単にいうと、目が覚めている状態で椅子に座っていたり、横になっているすべての行動を“座位行動”と定義しています。

WHO(世界保健機関)は2020年11月に「身体行動・座位行動ガイドライン」を公表し、座位時間を身体活動(立位等で行う活動)に置き換えることを推奨しています。

長時間の座位行動は十数年前ごろから注目されはじめ、今や全世界的に健康に悪影響を及ぼす要因として知られています。


長時間の座位行動にはどのような悪影響をもたらすでしょうか。

これまでに、長時間の座位行動と様々な病気や障害との関係が報告されています。

座りすぎと関係することが報告されている病気や障害は、糖尿病や心臓病、脳卒中、がん、肥満等、多岐にわたります。

また、座位時間の長さと寿命の短さ(死亡率の増加)が関係することも知られています。


日本人はどの程度の時間座っているのでしょうか。

20か国の成人を対象とした研究では、日本人は一日あたり540-1020分間(9時間から17時間)座っている人の割合が34.9%と最も多く、平日の平均座位時間は420分(7時間)でした。


調査対象となった20か国の中で、日本は長時間座っている人の割合が最も多く、7時間という平均座位時間は世界一の長さでした。皆さんも一日にどのくらいの時間を座って過ごしているのか、一度記録をつけてみてもよいかもしれません。

座りすぎを解消するには?


では、座り過ぎの悪影響をどのように解消すればよいでしょうか。

上記で説明した、病気や障害、死亡率の増加など座りすぎによる悪影響は、運動している人にも運動していない人にも同様に現れると言われています。


簡単にいうと、座り過ぎの悪影響は“運動する”ことでは解消できないということです。

座りすぎの対策は、直接座りすぎを解消することが最も有効で、座っている時間を座っていない活動に置き換えることが最も簡単で、最も有効な手段であると言えます。


最近では、事務機器などを製造するメーカーから、立位で作業や会議をすることのできる机や、作業面を上下させる機能のある机などが販売されています。

そのような器具を使用することで、今まで座って行っていた作業を立って行う作業に置き換えることができます。


また、家庭でできる座りすぎ対策として、座位で行っていた読書や作業を立って行うことや、座ってのテレビ視聴時間をなるべく短くすることなどが勧められます。


とはいえ、仕事の都合などでどうしても座っていなければならない人がいるのも事実です。

座り過ぎの悪影響には、座位時間が長いことに加えて、一度に座り続けている時間が長いことも大きく影響します。


長時間の座位を強いられる場合には、定期的に(30分に1回など)その場で立ち上がることも、座り過ぎの悪影響を回避するための有効な手段であると言えます。


掃除や洗濯、目的地への移動など、日常のさまざまな場面が近代化し、便利になった反面、座っていることにも注意を向けなければいけなくなってしまったと言えるのかもしれません。


“こまめに立ち上がる”意外と簡単に取り組むことのできる健康づくりではないでしょうか。

運動とともに立ち上がることにも取り組んでみましょう。


【参考文献】

厚生労働省HP

https://www.mhlw.go.jp/content/000656521.pdf


WHO身体活動・座位行動ガイドライン(日本語版)

:日本運動疫学会, 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 東京医科大学

http://www.tmu-ph.ac/news/data/210217_01.pdf


Bauman A1, et. Al., The descriptive epidemiology of sitting. A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med., 41(2), 228-35, 2011



執筆者

川福医療福祉大学 医療技術学部 健康体育学科 純教授
川崎医科大学附属病院 健康診断センター 健康運動指導士
博士(健康科学)
日本陸上競技連盟公認審判員
全日本スキー連盟公認スキー準指導員

脇本 敏裕

(わきもと としひろ)




  • 岡山県倉敷市にある川策医療福祉大学で健康づくりのための運動指導のスペシャリストである健康運動指導の養成に従事しています。川崎医科大学附属病院健康診断センターでは健康運動指導士として健康づくりのための運動指導に従事しています。


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