第1回:うつ病のあれこれ~Kさんのケース~

コロナ禍にあり、心の健康がますます注目を浴びるようになってきています。
いつ収束するかわからない状況の中、様々な環境変化でストレスがかかっている方も多いかと思います。
最近では「コロナうつ」などの言葉が聞かれるようになり、うつ病への注目が集まっていると言えます。
このコラムでは、全6回でうつ病についてお話しできればと思います。
それでは、そもそも、うつ病はどのような病気なのでしょうか。
コラム1回目は、うつ病を患った方が病院にいらっしゃるまで、どのような体験をされているのか、Kさんの例を基にお伝えしたいと思います。(※Kさんは架空の人物です。)
Kさんのケース
Kさんは東京都にすむ35歳の男性、妻と3歳の子供と暮らしています。
Kさんは新卒で食品関係の会社に入り、営業に配属、13年目になります。
営業職らしく、人好きのする性格でありながら真面目で他の人への気配りもでき、上司からも期待を寄せられています。
Kさんは、35歳になった1か月後、部長から呼び出されました。
管理職にポストが空くため、是非Kさんに受けてほしい、というのです。
念願の昇進の話に、Kさんは舞い上がるような気持ちになりました。
家庭では妻も第2子を妊娠しており、来年には出産予定です。
”仕事にプライベートに、ますます頑張らないと”とKさんは思いました。
新しい仕事はやりがいがありましたが、これまでと勝手の違うことも多く、仕事のやり方や部下のマネジメントをどの様にすれば良いか、考えこむことも多くなりました。
そんな様子に友人の同僚も気づき、もっと肩の力を抜くように、と言われましたが、根が真面目なKさんは「どうにかしなければ」と思うようになりました。妊娠中の妻にも心配をかけるわけにもいかず、仕事の話はなるべくしないようにし、妻を休ませるために休日は子供を連れて遊びに行きます。
そんな日が続くうち、Kさんは眠れなくなってきました。
明日の仕事のことや、今日あったことなどを考えるうちに、夜中の2時、3時になってきます。なんとか寝ても眠りが浅く、何度も目が覚めてしまいます。朝ぼんやりしながら朝食を食べ、会社につく頃にはようやく目が覚めたような心地がしました。
繁忙期になり、会議が連日続きました。
残業も続き、終電で家に帰って、そのままベッドに直行するが眠れない、そんな日々が続きました。
徐々にKさんは、書類に何度も目を通しても何が書かれているのか、理解ができなくなってきました。
また、会議中にぼんやりしてしまうことが多くなり、居合わせた上司から注意されてしまいます。
こんな自分はダメな人間だ、という考えが頭の中にグルグルと回ります。
自宅でも、食欲がわかず、数口何とか口につけますが、残してしまう事が続きました。
自宅に帰ってから、わずかな時間でも推理小説を読むことが楽しみだったのに、それすら読む気力がわきません。
口数も少なくなり、妻が心配して声をかけても「大丈夫」といい、寝室にこもってしまいます。
土日はずっと寝室で横になり、子供とも遊ばなくなりました。
そんなある日、会社に行こうとしますが、どうしても体が動かず、ベッドから起き上がることができません。
心配した妻が部屋を覗きにきて、声をかけられますが、自分が今どういう状態なのか説明できず、ただ横になるばかりでした。
うつ病を患う時、どのような体験をされるのかイメージしていただけるよう、「Kさんのケース」をご紹介しました。
うつ病は一生のうちに罹患する人が日本では100人中6人とも言われており、誰もがかかり得る病気といわれています。
これから、全6回にわたり、Kさんの経過をみながら、うつ病について取り上げていきたいと思います。
第2回目では、なぜうつ病になるのか?をお伝えしたいと思います。
執筆者
精神科医
【所属】
医療法人社団敬聴会祐天寺松本クリニック
【資格】
精神科専門医
公衆衛生学修士
松本 衣美
(まつもと えみ)


「もうちょっとだけ」の寝不足で、気づかないうちに・・

「うつる?」と言えば・・・「笑顔」もうつります!