産後の腱鞘炎はなぜ起こるのか? 〜スマホ・PC習慣と首肩の使い方から考える〜
産後の女性に多くみられる不調のひとつに「腱鞘炎」があります。
特に手首の親指側に痛みを生じるケースが多く、育児動作に支障をきたすことも少なくありません。
一般的には「抱っこが増えたから」「使いすぎ」、とくに生後間もない赤ちゃんの首は不安定で支えておく必要があります。
「手の使い過ぎ」「ホルモンの影響」と説明されることが多いですが、実際にはそれだけではありません。
腱鞘炎の背景には、妊娠・出産による身体変化に加え、日常的な身体の使い方、特にスマートフォンやパソコン操作、さらには首や肩の運動パターンが深く関係しています。
産後に腱鞘炎が起こりやすい理由

妊娠・出産を経て、女性の身体は大きく変化します。確かにホルモンの影響により関節や靭帯が緩み、筋力や協調性が一時的に低下する可能性はあります。
加えて、産後は睡眠不足や疲労の蓄積により、身体の回復力そのものも低下しやすい状態です。
このような状態で育児が始まると、抱っこや授乳、おむつ替えなど、手首や指を酷使する動作が一気に増加します。
特に親指を広げた状態で手首を使う動きが繰り返されることで、腱と腱鞘の摩擦が増え、炎症が生じやすくなります。
しかし、ここで見落としてはいけないのが、「もともとの身体の使い方」です。
スマホ・PC操作と腱鞘炎の関係

現代では、スマートフォンの長時間使用やパソコン作業が日常化しています。
これらの操作では、親指や手首を細かく繰り返し動かすだけでなく、前腕の筋群が持続的に緊張した状態になります。
特にスマートフォン操作では、片手で端末を持ち、親指で画面操作を行う姿勢が一般的です。このとき、親指は外転・伸展位を繰り返し、手関節は軽度の尺屈や掌屈位で固定されやすくなります。このような状態が長時間続くことで、腱に微細なストレスが蓄積され、腱鞘炎の下地が形成されていきます。
つまり、産後に突然腱鞘炎になるのではなく、妊娠前からの生活習慣によって蓄積された負担が、産後に表面化していると考えることができます。
さらに重要なのが、首や肩の使い方です。スマホやPC作業が多い方は、頭部前方位(いわゆるストレートネック傾向)になりやすく、肩甲帯の安定性が低下しています。
この状態では、本来肩や体幹で支えるべき負荷が、前腕や手部へと過剰に分散されます。その結果、手首周囲の筋群に過剰な負担がかかり、腱鞘炎のリスクが高まります。
また、肩甲骨の可動性低下や筋活動のアンバランスは、上肢全体の運動連鎖を崩し、「手だけで頑張る使い方」を助長します。
産後の抱っこ動作においても、本来は体幹と下肢を使って支えるべきところを、手首や腕で支えてしまう傾向が強くなります。
セルフケアの考え方

産後の腱鞘炎に対するセルフケアでは、「手首だけをケアする」という視点では不十分です。重要なのは、身体全体の使い方を見直すことです。
まず、スマートフォンの使用方法を見直しましょう。可能であれば両手で操作する、長時間の連続使用を避けるなど、親指への負担を軽減する工夫が必要です。
次に、前腕の筋緊張を緩和するためのストレッチやリリースも有効です。手首の屈筋群・伸筋群をゆっくりと伸ばし、血流を促進することで回復を助けます。
さらに、首・肩のポジションを整えることも重要です。頭部が前に出すぎないよう意識し、肩甲骨を軽く引き下げることで、上肢への負担を分散させることができます。
そして最も大切なのが、抱っこや授乳などの動作を見直すことです。体幹を安定させ、腕だけで支えないようにすることで、手首への負担を大きく軽減できます。
また、この不調の多さか親指、手首を支えるサポーターがあるので、活用してみるのも一手です。
執筆者
トータルケアまえいけグループ
あさひ整骨院
日本橋浜町院
鍼灸師
柔道整復師
今村 匡子
(いまむら きょうこ)
【運営】
オンラインサロン「産後ケアを学ぶサロン」
【著書】
『大丈夫なふりして生きてる人の体に効く こわばり筋ほぐし 』(サンマーク出版)
『産後リセット体操で妊娠前よりきれいにやせる!』(青春出版社)
『「やせたい」なんてひと言もいってないのにやせた1分ねじれ筋のばし』(サンマーク出版)
東洋経済オンラインビジネスニュースサイト著者
その他、全国紙、地方新聞、雑誌、週刊誌取材多数。講演、セミナーは年間50件を越える。



