肩の痛み

肩関節は鎖骨や肩甲骨の動きと共同して非常に大きな運動を可能とします。その反面、不安定な関節でもあります。肩関節は骨だけでなく筋や、軟部組織の靭帯などによって支えられているため様々な原因で痛みを発生することがあります。またスポーツなどで酷使される部位でもあり、スポーツ障害を引き起こすことが多い部位です。

日常生活から考えられる原因

1 運動による肩関節の障害

野球の投球動作、テニス、バトミントンなどの肩や腕を大きく振る動作を繰り返すスポーツでは腱や靭帯、骨などを損傷することがあります。不適切な動作フォームや筋力不足、オーバーワークなど原因を特定していくことが大切です。


2 デスクワークやストレスによるもの

長時間同じ姿勢でのデスクワークや身体的精神的ストレスをうけると筋肉が緊張して肩凝りを起こします。肩凝りは肩周辺の筋肉の緊張や血流不足で発生することが多いです。デスクワーク時は合間にストレッチをするなど慢性化しないように対策していきましょう。

3 転倒によるもの

肩関節は転倒などをした際に衝撃を受けやすい部位です。衝撃を受けた際に脱臼や骨折などを引き起こすことが多く注意が必要です。また肩関節を痛めるだけでなく鎖骨などを痛めている場合もあるので、痛みが強い時や長引く際は専門家に見てもらいましょう。


4 加齢によるもの

年齢を重ねるにつれて肩関節を構成する骨や軟部組織が弱体化していったり、肩関節をあまり動かさない生活を続けていると関節の柔軟性が無くなっていき痛みが出ることがあります。痛みが無い時は肩関節を意識して動かすことが大切です。


肩の痛みをともなう疾患

1 肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)

正式名称は肩関節周囲炎といいます。加齢にともない、肩関節とその周辺の組織が慢性的な炎症を起こし、腕を上げたり、後ろに腕を回す動作が痛みのために制限されます。肩の痛みは、程度によって6ヵ月~1年半ほどで回復しますが、回復を早めるには、肩の運動を行うのが効果的です。

この疾患・症状に関連する情報はこちら。四十肩・五十肩


2 肩腱板損傷

肩は腱板と呼ばれる4つの腱で囲まれ安定性が保たれていますが、加齢やスポーツによる使い過ぎ(オーバーユース)、ケガなどが原因で腱板が部分的に損傷(断裂)すると、肩を正常に動かすことができなくなり痛みを生じます。痛みは肩を動かすとき以外では就寝時に痛むこともあり、その範囲は肩だけでなく腕まで及ぶ場合もあります。20歳代ではスポーツによる使い過ぎで発症することが多いですが、50歳代以降では転倒して手をついたときなど軽い力でも断裂が起こることがあります。

3 肩峰下インピンジメント症候群

肩関節の中にあるクッションの役割をする関節包や安定させる役割をする腱板が、肩を動かすときに関節内で挟まれて起こる疾患で、腕を挙げたときの肩の痛みやひっかかり感、就寝時の痛みが主な症状です。どの年齢層でも起こりえますが、若年者では肩をよく使うスポーツをしている人に多く、また猫背姿勢の人にも多いと言われています。最終的には腱の断裂(肩腱板損傷)に至ります。

4 上腕二頭筋長頭腱炎・断裂

肘を曲げて力こぶを作る筋肉(上腕二頭筋)の腱が肩のあたりで炎症または断裂した状態で、肩から腕にかけての前面に痛みがでます。肩腱板損傷と合併して、肩の痛みの原因として発症することが多くあります。上腕二頭筋の長頭腱が完全に断裂すると、むしろ痛みはなくなり力こぶが肘側へ移動します。

5 肩関節脱臼

自分では肩を動かすことができず痛みとともに腫れや内出血が見られ、肩の外側が凹んだように見えることもあります。麻酔なしで徒手的に整復できる場合が多いですが、痛みが強い場合や骨折を伴う場合は麻酔を必要とすることがあります。整復後は三角巾などで2~3週間固定し、その後、筋力トレーニングやストレッチなどのリハビリを開始します。肩関節は最も脱臼が起こりやすく、反復性に移行する割合も高いため注意が必要です。


6 反復性肩関節脱臼

わずかな力で肩関節の脱臼を繰り返す疾患で、初回の肩関節脱臼が若ければ若いほど、高い割合で反復性となります。脱臼を起こしていないときは、ほとんど症状がないか軽いだるさがある程度で、肩を特定の方向へ動かしたときに不安感があることが多いです。投球動作やテニスのサーブ動作などで簡単に脱臼するようになり、自分の力で簡単に整復できる場合もあります。

7 肩鎖関節脱臼

転倒して肩から落ちた場合やラグビーや柔道などコンタクトスポーツで肩の外側から強い力が加わったときに、肩の内側にある鎖骨が脱臼します。肩周りの痛みや腫れとともに、肩が動かしにくかったり鎖骨の外側が上に飛び出たように見えることがあります。脱臼の程度が軽ければ鎖骨を上から押さえて固定するだけで治ることが多いですが、若い方で完全に脱臼している場合は手術が勧められます。

8 鎖骨骨折

腕を後ろに伸ばした状態で倒れたり、転倒して肩から落ちたときに骨折することが多く、骨折した部分の痛みや腫れ、変形が見られます。神経を傷めて腕や手にしびれが出ることもあります。ギプスや包帯などによる保存療法が原則で、小児の場合は2~3週間、成人の場合は6~8週間の固定を行います。

9 上腕骨近位端骨折

二の腕の骨(上腕骨)が肩に近い部分で折れた状態で、転倒して手を伸ばした状態でついたときや、直接肩の外側を打ったときなどに発生します。高齢の女性に多く、骨粗しょう症と大きく関連しています。折れた直後から強い痛みとともに、肩や腕を動かすことができません。約85%は転位が少なく三角巾による固定で治療が可能ですが、転位が大きいと手術が必要なります。

10 野球肩

腕を使うスポーツによって、肩関節には繰り返し負担がかかり様々な障害が起こります。それらは「野球肩」や「水泳肩」と呼ばれ、肩関節の周りに痛みを引き起こし、多くはスポーツを続けることが難しくなります。どの部位にどんな変化が起きているかを明らかにして、適切に対処することが重要です。原因として、肩腱板損傷、肩峰下インピンジメント症候群、リトルリーガーズショルダーなどがあります。


11 リトルリーガーズショルダー(上腕骨骨端線離解)

小学校高学年から中学生にかけて多い疾患で、投球時の肩の痛みが主な症状です。繰り返しの投球動作により、二の腕の骨(上腕骨)の成長軟骨に炎症もしくは疲労骨折が起こった状態で、悪化すると投球後も痛みが持続するようになります。早期発見と投球禁止・投球制限をしながらのリハビリが重要です。

12 腕神経叢損傷

多くはバイクの転倒事故などにより、腕が不自然な姿勢で投げ飛ばされたり、頭や肩が強く引張られた後に、腕を挙げることができなくなったり、感覚がなくなることがあります。腕神経叢と呼ばれる鎖骨の近くにある神経の束が損傷を受けることが原因です。鎖骨の骨折や肩関節の脱臼に併発したり、分娩時の新生児に起こることもあります(分娩麻痺)。主な症状は片側の腕の麻痺、しびれ、痛みです。損傷した部位や程度により、肩を挙げたり肘を曲げることができないものや腕全体が全く動かないもの、徐々に自然回復するものから手術が必要なものまで様々です。

13 頸肩腕症候群や頸部脊椎症をはじめとする首の疾患

首周りの骨や筋肉による疾患(頸肩腕症候群、頸部脊椎症など)に現れる症状の1つとして、首から肩や腕にかけての痛みやだるさを生じる場合が多くあります。自然に治る場合もありますが、痛みが続く場合や腕や手にしびれを伴う場合は注意が必要です。

対処法

専門家に相談する

原因が特定できないまま自己判断で無理に動かすとかえって悪化してしまう恐れもあり注意が必要です。
痛みが強い場合や痛みが続く場合は我慢せず、専門家の指示を仰ぐことをおすすめします。

痛みで困っている時、適切な解決方法を教えてもらえるのでまずは相談してみましょう。

⇒【肩の痛みについて】相談できる院・施術所を見る


監修:理学療法士 門脇 章人

トレーニングで鍛える

肩のインナーを強化する運動


回数:10回×3セット

STEP1:輪ゴムを2つ準備して結びます。その後、輪ゴムを親指に引っ掛けます。
STEP2:両肘をテーブルの上に置き、両手をゆっくりと外側に開きます。
STEP3:ゆっくりと元の位置に戻します。
STEP4:繰り返し行います。


※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。


動画提供元:株式会社リハサク

肩のインナーを強化する運動


回数:10回×3セット

STEP1:肘の下・お腹の上にタオルを置きます。
STEP2:タオルに置いた手をお腹に5秒間程度押しつけます。
注意点:お腹を押す際に、肩が前方に出ないように注意してください。


※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。


動画提供元:株式会社リハサク

セルフケアでメンテナンス

脇腹の筋肉を柔らかくするストレッチ


回数:10秒×10セット

STEP1:両手を頭の上で組みます。
STEP2:体を真横に傾け、背中・脇腹を伸ばします。伸ばす側のお尻は座面から離さないようにしてください。
STEP3:ゆっくりと元の姿勢に戻します。
注意点:腰を丸めないように注意してください。


※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。


動画提供元:株式会社リハサク

胸の筋肉を柔らかくするストレッチ


回数:10秒×10セット

STEP1:片足を前方へ大きく踏み出します。
STEP2:片手を壁につけます。
STEP3:体重を前方へ移動させます。前胸部が伸びている状態を保持してください。
STEP4:元の姿勢に戻ります。


※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。


動画提供元:株式会社リハサク