肘の痛み

肘関節は3つの骨が組み合わさることで関節が成り立っています。また肘の周りに軟骨、筋肉や腱などがあり、関節の安定性を保っています。その肘関節が炎症や外傷により痛みが生じます。肘を酷使するスポーツや重労働により肘関節に負荷がかかりすぎ炎症を起こしてしまうケースが多いです。

日常生活から考えられる原因

1 運動による関節への負担

関節へ負担がかかり肘が痛む場合

野球やテニス、ゴルフなど肘を酷使するスポーツでは負担がかかりすぎ、炎症や変形が起きてしまいます。フォームの悪い投球動作やスイング動作は痛みを引き起こす原因となるので根本から改善していくことが大切です。また小・中学生の成長期にあたる時期は骨や関節が未熟のため繰り返し外力が働くことで障害が起きやすくなっています。

2 加齢による変形

加齢による変形で肘が痛む場合

重労働やスポーツを長年続けていると負担が重なり肘関節の軟骨がすり減り可動域制限が起きます。肘の曲げ伸ばしが制限され、長時間の作業やスポーツ時に痛みが出ます。

3 小児の脱臼・骨折

子どもの腕を強く引張ると靭帯から関節が外れてしまい急に泣いて痛みを訴えることがあります。すぐに適切な処置をすれば後遺症などはなく治りますが、まれに再発を繰り返すことがあります。また転んだときに肘の周りを強く打ったり、手を伸ばしたままついてしまった場合に、肘の骨が折れたり脱臼してしまうことがあります。肘の激しい痛みに加えて腫れや変形などが見られます。

肘の痛みをともなう疾患

1 変形性肘関節症

肘のケガ(関節内の骨折や脱臼)や過度な使用(スポーツや重労働)が原因で関節が変性することで、肘を動かした時に痛みや雑音がしたり、肘が完全に曲がらない・伸びきらないなどの症状がでます。股・膝関節にくらべると頻度は低いですが、野球肘の末期は変形性肘関節症となります。またロッキング症状(激痛とともに肘が動かせない)や尺骨神経麻痺(肘部管症候群と同様の症状)を生じることがあります。

2 テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

ものをつかんで持ち上げたりタオルを絞るときに手首を甲側へ反らす動作をすると、肘の外側に痛みを生じる疾患です。手首の使い過ぎが原因で、テニスをはじめ腕をよく使うスポーツで発症することが多いですが、日常生活の中で発症する場合もあります。肘の外側にある上腕骨外側上顆と呼ばれる部位に炎症がおこった状態で、炎症部を押さえると痛みが増します。保存療法で治療できる場合が多く、局所の安静やバンド型サポーターの着用、手首を動かす筋肉のストレッチなどが効果的です。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)

3 ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)

上腕骨外側上顆炎と同様に手首の使い過ぎが原因で、肘の内側にある上腕骨内側上顆と呼ばれる部位に炎症がおこった状態です。ものをつかんだり手首を手のひら側に曲げた時に肘の内側に痛みを生じ、また肘の内側を押さえると痛みが増します。基本的には保存療法で対処し、局所の安静やバンド型サポーターの着用、手首を動かす筋肉のストレッチなどが効果的です。

4 野球肘(肘離断性骨軟骨炎・上腕骨内側上顆炎・肘内側側副靭帯損傷)

野球肘野球に多い肘関節の障害を総称したもので、原因によって肘の内側、外側、後方に障害がおこり特有の症状(痛みなど)が現れます。少年では離断性骨軟骨炎、成人では上腕骨内側上顆炎や内側側副靭帯損傷が原因として多いと言われています。日ごろの練習量を調整したり、ウォーミングアップやクールダウンを徹底するなどの予防が重要です。


5 肘離断性骨軟骨炎

若年者のスポーツ障害として、少年野球での投球動作で生じることが多い疾患です。肘へのストレスが繰り返し加わることで関節面のすぐ下の骨が壊死した状態で、投球時あるいは投球後の肘の痛みと引っかかり感が主な症状です。初期は安静にすると痛みは軽減しますが、進行すると投げるたびに痛みが強く現れたり、壊死した部分で骨の一部が分離してしまうと(いわゆる関節ねずみ)、関節に挟まれてロッキング症状(激痛とともに肘が動かせない)がおこることがあります。初期に発見できた場合は投球を中止し、保存療法で壊死部の修復を待つのが一般的です。骨が分離している例など進行している場合は手術を行います。

6 肘関節靭帯損傷

肘の内側にある内側側副靭帯の損傷が発生頻度としては最も多く、成人の投球時の肘の痛みの原因として多く見られる疾患です。肘の内側にある靱帯が投球時に繰り返し伸ばされることで損傷しておこるもので、肘の内側に痛みを生じます。投球以外にも、テニスやバレーなど腕を使うスポーツでおこりやすいと言われています。

7 肘内障

2~6歳の小児によくおこる疾患で、急に腕を引張られたりひねられた後に、肘の痛みとともに腕を下げたまま動かさなくなります。典型的な例は、親と手をつないでいて子どもが転びそうになったのを親が手を引き上げて防ごうとした時などです。腫れや変形はありません。徒手整復で痛みは治まり後遺症もない場合が多いですが、再発を繰り返すことがあります。

8 上腕骨顆上骨折

小児で最も頻度の高い骨折の1つで、そのほとんどは転倒した時に肘を伸ばしたまま手をついて生じます。肘の強い痛みに加え、肘を動かすことができず、骨折部は大きく腫れます。多くは徒手整復の後のギプス固定で治療可能ですが、手先のしびれや、前腕の腫れや痛みがある場合は、神経損傷や血管損傷による血行不全を併発している可能性があるため注意が必要です。

9肘関節脱臼

肘関節の脱臼は肩に次いで多いと言われています。肘関節脱臼の90%は後方脱臼で、転倒などで手をついたときに肘が過度に伸展されると、てこの原理で関節が脱臼し、肘が二の腕より後ろに飛び出ます。自分で肘を動かすことができず、時間とともに腫れが強くなります。尺骨神経麻痺(肘部管症候群と同様の症状)を合併することもあります。

10 上腕三頭筋腱炎

野球など腕をよく使うスポーツをする人に見られる疾患で、肘の後方に痛みが出ます。肘を伸ばす筋肉である上腕三頭筋の使い過ぎが主な原因と考えられていて、筋や腱の一部が損傷(断裂)した状態です。痛みが強い場合は局所を安静にして、痛みが軽減してきたらストレッチなどをして筋肉の柔軟性を高めることも重要です。離断性骨軟骨炎などとの鑑別が重要です。

11 腕神経叢損傷

多くはバイクの転倒事故などにより、腕が不自然な姿勢で投げ飛ばされたり、頭や肩が強く引張られた後に、腕を挙げることができなくなったり、感覚がなくなることがあります。腕神経叢と呼ばれる鎖骨の近くにある神経の束が損傷を受けることが原因です。鎖骨の骨折や肩関節の脱臼に併発したり、分娩時の新生児に起こることもあります(分娩麻痺)。主な症状は片側の腕の麻痺、しびれ、痛みです。損傷した部位や程度により、肩を挙げたり肘を曲げることができないものや腕全体が全く動かないもの、徐々に自然回復するものから手術が必要なものまで様々です。

12 頸肩腕症候群や頸部脊椎症をはじめとする首の疾患

首周りの骨や筋肉による疾患(頸肩腕症候群、頸部脊椎症など)に現れる症状の1つとして、肩から腕や手指にかけての痛みやだるさを生じる場合が多くあります。自然に治る場合もありますが、痛みが続く場合や腕や手にしびれを伴う場合は注意が必要です。

対処法

専門家に相談する

原因が特定できないまま自己判断で無理に動かすとかえって悪化してしまう恐れもあり注意が必要です。
痛みが強い場合や痛みが続く場合は我慢せず、専門家の指示を仰ぐことをおすすめします。

痛みで困っている時、適切な解決方法を教えてもらえるのでまずは相談してみましょう。

⇒【肘の痛みについて】相談できる院・施術所を見る


監修:理学療法士 門脇 章人

トレーニングで鍛える

二の腕の筋肉を強化する運動


回数:10回×3セット

STEP1:手のひらを下にして肘を伸ばし、肘の下にタオルを置きます。
STEP2:二の腕に力を入れ、タオルをつぶし、5秒間程度力を入れます。
STEP3:力を抜きます。繰り返し行います。
注意点:力を入れる際に肩が浮かないように注意してください。


※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。

動画提供元:株式会社リハサク

セルフケアでメンテナンス

前腕の筋肉を柔らかくするストレッチ


回数:10秒×10セット

STEP1:手を前方に伸ばし手の平を下に向けます。
STEP2:反対側の手で手の甲を支えます。
STEP3:手を手前に引きます。
注意点:手関節に痛みがある場合は肘を曲げても構いません。


※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。


動画提供元:株式会社リハサク

前腕の筋肉を柔らかくするストレッチ


回数:10秒×10セット

STEP1:手を前方に伸ばし手の平を上に向けます。
STEP2:反対側の手で手の平を支えます。
STEP3:手を手前に引きます。
注意点:手関節に痛みがある場合は肘を曲げても構いません。


※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。


動画提供元:株式会社リハサク