お尻の筋肉の痛み

体の中で最も大きな関節である股関節は歩行や階段の上り下り、立位時など体重を常に支えている部位のため痛みや違和感を生じやすい部位です。また坐骨神経と呼ばれる腰から足にかけて通る人体で一番太い神経が通っています。特定の疾患があったり、股関節の周りについている筋が固くなったりすることで神経を圧迫して足にしびれや痛みが出ることがあります。

日常生活から考えられる原因

1 特定の疾患が原因なもの

腰の椎間板が一部飛び出して神経を圧迫する腰部椎間板ヘルニアや脊柱管が狭くなり神経を圧迫する脊柱管狭窄症など神経痛を誘発する疾患があります。特定の疾患によりお尻の痛みやしびれとして症状が出ることがあります。

2 肥満や筋の柔軟性の低下

体重の増加や、ストレッチなどをせずに激しい運動を行い筋の柔軟性が低下することで神経が圧迫され痛みやしびれがでます。長時間同じ姿勢とらないように気をつけることや、日常的にストレッチを行なうなど日常生活の見直しを行いましょう。

お尻の痛みをともなう疾患

1 変形性股関節症

関節軟骨の変性・摩耗により股関節に痛みを生じます。また太ももやお尻、腰などに痛みやだるさを訴えることもあります。はじめのうちは立ち上がりや歩き始め、また長時間歩いたあとに痛みやだるさを感じる程度ですが、進行してくると痛みが強く持続するようになり、寝ていても痛みが出ることがあります。女性に多く、先天性股関節脱臼やペルテス病、大腿骨頭すべり症といった股関節の疾患が原因となることがほとんどです。

2 先天性股関節脱臼(発育性股関節脱臼(形成不全))

出生前や出生後の発育過程で、股関節が脱臼あるいは亜脱臼や将来脱臼する可能性のある状態を指し、男女比は1:5~9と女子に多い疾患です。乳幼児期に痛みを訴えることはなく、おむつ交換のときなどに股関節の開き具合が悪かったり左右差がある場合は本症を疑います。思春期以降に、前股関節症として股関節から膝関節部の痛みを訴えることがあり、その後、変形性股関節症に移行する場合があります。

3 大腿骨頭壊死症

太ももの骨(大腿骨)の先にある大腿骨頭と呼ばれる部位が、壊死してしまい股関節に痛みを生じる疾患です。大腿骨頚部骨折後や大腿骨の手術で血管を損傷した場合に大腿骨頭への血流が途絶えることでおこるほか、明らかな原因はなくステロイドの投与、あるいはアルコールの過剰摂取に関連した症例が多いと言われています。ステロイド性は20~30歳代の男性に多く、短期間で大量のステロイドを投与した場合におこり、アルコール性は40歳代の男性に多く、1日に日本酒で3合以上程度のアルコールを15年以上摂取していた経歴があることが多いようです。いずれも両側に発生する場合が多く、膝やお尻に痛みが出ることもあります。

4 梨状筋症候群(坐骨神経麻痺)

お尻の奥にある筋群(梨状筋など)の使い過ぎによって、その間を通る坐骨神経が圧迫されることで、お尻や太ももの裏側に広がるようなしびれや痛み(坐骨神経痛)を生じる疾患です。ランニングやマラソンなど股関節を繰り返し動かしているときや運動後に発症します。仰向けになって膝を伸ばしたまま脚を持ち上げていくと、症状が強くなります。梨状筋などのお尻の奥の筋肉をストレッチすることが有効ですが、難治例では手術をしたり、腰部椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症を併発している場合があります。

5 腰椎椎間板ヘルニア・腰部脊柱管狭窄症

腰部疾患に現れる症状の1つとして、お尻に痛みやしびれを生じる場合が多くあります。
○腰椎椎間板ヘルニア→背骨をつなぎクッションの役割をする椎間板の一部が、加齢やスポーツなどが原因で飛び出てしまうことで、神経を圧迫し腰やお尻、脚の痛みやしびれ(坐骨神経痛)を引き起こします。痛みを和らげるために側弯症がおこる場合があります。10~60歳代の幅広い年代で発症し、発生する部位によって筋力が低下して動きがぎこちなくなったり感覚が鈍くなることがあります。ぎっくり腰などに伴って症状が急激に生じる場合と、慢性的に同じ姿勢をとり続けるなどして徐々に発症する場合があります。
○腰部脊柱管狭窄症→加齢やケガによる背骨の変形(変形性脊椎症、腰椎分離症・分離すべり症など)が原因で、背骨の中を通る神経が骨や筋肉など周囲の組織によって圧迫され、両側もしくは片側のお尻や脚にしびれや痛み(坐骨神経痛)を生じます。また最も特徴的な症状として「神経性間欠跛行」というものがあり、長時間歩くと症状がひどくなりますが、姿勢を変えてしばらく休むと症状がなくなり再び歩くことができます。薬やブロック注射、サポーター着用などの保存療法が第一選択ですが、症状が長期にわたって改善しない場合は手術が適用されることもあります。

対処法

専門家に相談する

原因が特定できないまま自己判断で無理に動かすとかえって悪化してしまう恐れもあり注意が必要です。
痛みが強い場合や痛みが続く場合は我慢せず、専門家の指示を仰ぐことをおすすめします。

痛みで困っている時、適切な解決方法を教えてもらえるのでまずは相談してみましょう。

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監修:理学療法士 門脇 章人