股関節の痛み
股関節の変形や周囲の組織の炎症から、太ももより下の脚に痛みが出ることがあります。原因が股関節に関わる骨や関節が起因しておこる痛みは原因を特定し、早期に治療していくことが重要になってきます。股関節に症状が出ず、太ももや膝のみに症状が出る場合があり、発見できず治療が遅れてしまうことがあるため注意が必要です。また生まれつき形成不全があり、年齢を重ねるにつれ痛みなどの症状がでる場合もあります。
日常生活から考えられる原因
1 変形によるもの
加齢による負担などによって股関節が変形して痛みが出ます。子どもの時の形成不全や股関節疾患の後遺症からおこることが多いです。初期は歩き始めに太ももの付け根に痛みがおき、続いて膝の痛みなどに繋がり、進行していくと就寝中にも痛みがでることがあります。
2 スポーツによる障害
サッカーなどの脚をよく使うスポーツで太ももの付け根やその周辺に痛みが出ることがあります。一度発症すると痛みが長引くことが多く、股関節の動きが制限されたり、筋力の低下がみられることがあります。
3 幼少期に起こる痛み
2歳から10歳の間に股関節や太もも、膝に痛みを訴え、足を引きずるような歩き方をすることがあります。幼児期や少児の時期は治療の効果が出やすいので早期に治療を始めていくことが大切です
4 交通事故や転倒によるもの
交通事故で強い衝撃が加わり股関節を脱臼したり高齢者の転倒で大腿骨を骨折してしまうと、骨の周囲にある神経を損傷することで太ももに痛みやしびれがでることがあります。強い衝撃が加わった際や高齢者の転倒による痛みは注意が必要です。
股関節の痛みをともなう疾患
1 変形性股関節症
関節軟骨の変性・摩耗により股関節に痛みを生じます。また太ももやお尻、腰などに痛みやだるさを訴えることもあります。はじめのうちは立ち上がりや歩き始め、また長時間歩いたあとに痛みやだるさを感じる程度ですが、進行してくると痛みが強く持続するようになり、寝ていても痛みが出ることがあります。女性に多く、先天性股関節脱臼やペルテス病、大腿骨頭すべり症といった股関節の疾患が原因となることがほとんどです。
2 先天性股関節脱臼(発育性股関節脱臼(形成不全))
出生前や出生後の発育過程で、股関節が脱臼あるいは亜脱臼や将来脱臼する可能性のある状態を指し、男女比は1:5~9と女子に多い疾患です。乳幼児期に痛みを訴えることはなく、おむつ交換のときなどに股関節の開き具合が悪かったり左右差がある場合は本症を疑います。思春期以降に、前股関節症として股関節から膝関節部の痛みを訴えることがあり、その後、変形性股関節症に移行する場合があります。
3 大腿骨頚部骨折・大腿骨転子部骨折
骨粗しょう症のある高齢者に多発する骨折です。太ももの骨(大腿骨)は股関節からすぐ下のところで曲がっているため力が集中しやすく、骨がもろい場合、転倒などで容易に骨折します。転倒直後に立ち上がれなくなり、股関節に痛みを訴えます。折れる位置により頚部骨折(頚部内側骨折)と転子部骨折(頚部外側骨折)に分かれますが、頚部骨折は最も癒合しにくい骨折のため、骨折の程度によりますが、骨接合術や人工骨頭置換術などの手術療法が推奨されます。
4 大腿骨頭壊死症
太ももの骨(大腿骨)の先にある大腿骨頭と呼ばれる部位が、壊死してしまい股関節に痛みを生じる疾患です。大腿骨頚部骨折後や大腿骨の手術で血管を損傷した場合に大腿骨頭への血流が途絶えることでおこるほか、明らかな原因はなくステロイドの投与、あるいはアルコールの過剰摂取に関連した症例が多いと言われています。ステロイド性は20~30歳代の男性に多く、短期間で大量のステロイドを投与した場合におこり、アルコール性は40歳代の男性に多く、1日に日本酒で3合以上程度のアルコールを15年以上摂取していた経歴があることが多いようです。いずれも両側に発生する場合が多く、膝やお尻に痛みが出ることもあります。
5 ペルテス病
3~12歳くらいの男子に多い疾患で、股関節の痛みが多いですが、太ももから膝関節の痛みだけを訴える場合もあります。また痛みが軽い場合は、歩行の異常(つま先を外に向けたり、上半身を左右に揺らすなど)から発見されることもあります。太ももの骨の上端(骨端核)が壊死することで股関節が変形してしまう疾患で、その原因は明らかになっていません。多くは片側のみに発症しますが、約20%は両側にみられることがあります。骨の壊死は、壊死した部分が新しい骨に置き換えられることで治癒しますが、変形が残ってしまった場合は、将来、変形性股関節症に移行します。
6 単純性股関節炎
小児の股関節痛の原因として最も多い疾患です。3~10歳の男子に多く、股関節痛、歩行の異常が主ですが、太ももから膝にかけての痛みを訴えることもあります。通常は片側のみで、両側同時に発症することはまずありません。はっきりとした原因は不明ですが、通常は1~2週間程度安静にすれば治癒します。ペルテス病や感染による股関節炎との鑑別が重要です。
7 化膿性股関節炎
乳児(特に生後1カ月以内)に多い疾患で、主には黄色ブドウ球菌への感染が原因で関節が破壊され、発熱、不機嫌、食欲不振、感染性下痢などの全身症状がでます。90%以上は片側性で、おむつ交換などで股関節を動かしたときに号泣します。成人では、人工股関節置換術などの手術後の合併症として生じることがあります。早期に手術による排膿と洗浄が必要です。
8 大腿骨頭すべり症
10~16歳の男性肥満児に多い疾患で、股関節の痛みや歩行の異常が主ですが、膝の痛みや脚全体の痛みのみを訴えることもあるため注意が必要です。太ももの骨の先端(大腿骨頭)が成長軟骨の部分で後下方にすべる疾患で、全体の20~40%は両側に発症し、急激に症状が現れるタイプや徐々に発症するタイプがあり、ホルモンの異常や外傷など様々な原因が考えられていますが、明らかではありません。すべりの程度により治療法が異なりますが、多くは手術療法が適応となります。
9鼠径部痛症候群(グロインペイン症候群)
運動時に太ももの付け根の鼠径部やその周辺に痛みが生じる疾患で、20歳前後の男性に多いです。他の競技に比べサッカーで多く見られ、キック動作やランニング動作の繰り返しによって、体幹から股関節にかけての筋や関節の柔軟性や筋力が低下することが原因で、股関節周辺の動きが悪くなり痛みにつながると考えられています。積極的なアスレチックリハビリテーションが重要ですが、一度発症すると治りにくいと言われています。
10 外傷性股関節脱臼
高所からの転落や交通事故など強い力が加わったときに起こり、強い痛みともに股関節を動かすことができなくなります。加えて、骨盤の骨折や脚のしびれ(坐骨神経麻痺)、太ももの骨の先端(大腿骨頭)の壊死がおこる場合があります。単純な脱臼の場合は徒手整復が可能ですが、骨折を伴う場合は手術を必要とします。
対処法
専門家に相談する
原因が特定できないまま自己判断で無理に動かすとかえって悪化してしまう恐れもあり注意が必要です。
痛みが強い場合や痛みが続く場合は我慢せず、専門家の指示を仰ぐことをおすすめします。
痛みで困っている時、適切な解決方法を教えてもらえるのでまずは相談してみましょう。
監修:理学療法士 門脇 章人
トレーニングで鍛える
股関節の外側の筋肉を強化する運動
回数:10回×3セット
STEP1:横向きに寝て、下の膝は軽く曲げ、上の足をしっかり伸ばします。
STEP2:上の脚を斜め後ろに上げます。
STEP3:ゆっくりと元の位置に戻します。
注意点:足を体よりも前方で上げないように注意してください。
※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。
動画提供元:株式会社リハサク
お尻の筋肉を強化する運動
回数:10回×3セット
STEP1:横向きで両下肢を曲げて合わせます。
STEP2:踵をくっつけたまま股関節を開きます。
STEP3:その後ゆっくりと閉じます。
注意点:腰が開かないように注意してください。
※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。
動画提供元:株式会社リハサク
セルフケアでメンテナンス
お尻の筋肉を柔らかくするストレッチ
回数:10秒×10セット
STEP1:椅子に腰掛け、片足を反対側の膝に乗せます。
STEP2:上体を伸ばしたまま前方へ倒します。
STEP3:お尻が伸びている状態を保ちます。
注意点:背中が丸まらないように注意してください。
※注意事項※
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)を行なった際に体に異変が生じたり、強い痛みを感じた場合はすぐに中止し、専門機関に相談した上で専門医の指示に従ってください。
・本ページ掲載のストレッチ・運動・消炎処置(アイシングなど)において生じたいかなる事故・クレームに対して、弊社、監修者は一切の責任を負いかねます。
動画提供元:株式会社リハサク